第1話「トンネルの先は異世界でした」

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第1話「トンネルの先は異世界でした」

 ──なん、っだありゃ?  ガルム達の見た光景。  そこには……、  本来あるべきはずのフォート・ラグダはなく──かわりに、なんといっていいのか……不気味なオブジェクトの様なものが(そび)えていた。  敢えて言うなら蟻塚だろうか。  それの巨大な奴で、ところどころに子供がやっと通れそうなくらいの穴がたくさん開いている。 「は?」  ガルムも驚き、口をポカンと開ける。  二人が予想していた光景は、爆破により木っ端みじんになった要塞跡地だったのだが……。 「要塞はどこへいった?」「ここはどこだよ!?」  …………。  顔を見合わせる二人。  少なくとも、周辺の地理に明るいはずのビリィがこの態度だ。  よくよく目を凝らせば、要塞があるべき位置には数十人の人影が集まっている。  ビリィの手下に……保安官補佐や賞金稼ぎの生き残りどもだ。  地下通路とはいってもそれほど距離があったわけではないのだろう。  移動距離は100mもない。 「「…………」」  顔を見合わせつつ、(まば)らに見える彼らに合流しようと馬首を動かすが──。 「傾注(アテンション)っ!!」  すぐ近くで、エリナの号令が聞こえた。  やはり、……そう距離は離れていない───やばい……見つかる。  ここがどこかよりも、まずはあのエリナから身を隠す方が先決だろう。  そう思ってエリナとは逆方向に馬車を向けようとした。 「保安官(シェリフ)!」「親分!」  その時、ガサガサと草を揺らしながら保安官補佐と、ビリィの手下が連れ立ってやってきた。  それぞれ、負傷者を担いでいる。  ビリィの手下は、同じくビリィの手下を──。  保安官補佐は、足を怪我している…………女の子を。  はぁ!?  女の子????  ヨロヨロと歩く彼ら。その周囲は腰まである草に覆われている。  それは青々と茂り、水分をたっぷりと含んでいるらしくズボンはぐっしょりと濡れていた。  乾燥した地方では見られない光景だ。  ヨタヨタと(すが)りつく彼らに手を伸ばすガルムとビリィ。 「おう! 何か知らんが脱出できたみたいだな……はやく乗れ──」  仲間と合流できたことを素直に喜び、顔に喜色を浮かべるビリィは、手をつかんで馬車に──、  ──ヒュドッッ! 「ぅぁ?」  ドタリと、ビリィの手下が突然地面に倒れる。 「なにやってんだ!」  同じく馬車に乗り込もうとしていた保安官補佐が手を貸そうと伸ばす、が──、  突然、倒れたビリィの手下が担いでいた負傷者の頭にも、スカカカァァン! と複数の矢のようなモノが付きささる。 「ぐぁぁっぁ!」  断末魔の声を上げたあとに絶命するビリィの手下。    ──矢?  矢だって!?  そんなものを使う連中は決まってる────……!! 「先住民か!?」  フォート・ラグダがあった頃に、徹底的に周囲の先住民を弾圧したというが、折を見て元の土地に帰ってきてもおかしくはない。  もし、そこでデカい顔をする無法者(アウトロー)を見かけたら排除しようとするのは道理だろう。 「そいつはもう無理だ! 早く乗れ」  ビリィの手下は二人とも助からないだろう。  素早く見切りを付けると、保安官補佐と少女を馬車に乗せようと……。
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