第3話「奴等はゴブリン」

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第3話「奴等はゴブリン」

「「ゴブリン?」」  って誰だよ? 「ご、ゴブリンよぉ!」  ゴブリンはゴブリンよ──! と少女は叫び続けている。  よくよく見れば目鼻立ちの通った茶髪の結構な美人さんだ。  十代の前半くらいだろうか……ビリィより、少し下に見える。 「よくわからんが──」 「何言ってるのよ! 殺したのよッ? あなた達がゴブリンを、ごぶりんをぉぉぉ! ああああああああああ、」  報復される(ペイバック)───と、そう言ったきり少女はバタリと倒れて気絶してしまった。 「おー……いてぇぇ」  その横で頬を晴らしたビィトが不満げに口を尖らせる。 「何か知らんが……あの醜悪な連中がゴブリンとかいう部族なんだろうな」  ここらを縄張りとしている連中だとは理解できた。 「聞いたことねぇよ。ゴブリンなんて部族はよッ! フォート・ラグダにゃ、今まで一度も来たことないぜ?」 「アメリカは広い。そして、世の中はもっと広い。お前の知らん部族だっているさ(俺も知らんがな)」  それにしても、この場所の説明はつかないが……。 「はぁ……? ヤクでラリってるのか俺たちは……」 「それにしては生々しい……が、まぁ──今はここを離れよう」  取り敢えず回収した少女を捨てて行くわけにもいかず、  馬車の隅に横たえると、ガルムは馬車を走らせた。  あてがあるわけではないが、ここに留まるよりは移動した方がましだろう。  しかし、何が起こった?  ガルムは自分の知識を総動員して理論を組み立てる。  その様子を見て、ビリィがニヤニヤしつつ、「さすが、年の功だな──」とからかってくる。    アホぉ、勉強の賜物だわ!  軽く、ひと睨みしつつ  馬車を駆る道中、簡単に予測を話してみる。 「ニューヨークではな────」  と、ガルムは都会で読んだSFというジャンルの本について語って見せた。  タイムスリップだとか……、  平行世界についてだ──。    その間も馬車を走らせているが、遅々として進まない。草が深すぎるのだ。 「──よくわからんけど……別の世界に来たってことか?」  ビリィは若いだけあって柔軟な発想をしている。  ガルムも本を読んだ知識がなければすぐには納得できなかっただろう。  そうでなければ────────。  …………とても納得できない。  なんせ目の間の光景には、荒事になれた二人でも目を背けるような事態が起こっているのだ。 「正直、納得できねぇけど……ここはアメリカじゃないな──」 「あぁ……」  …………。 「だってよぉ……あんな連中──人間なわけないだろう!?」  ズルズルと、馬車が深い草地を何とか進み、元々フォート・ラグダがあった乏しきところまで行けば……。  ボリボリ、グチャグチャと、ゴブリン族が保安官補佐やらビリィの手下を貪り食っていた。  まだ生きている者もいたが、生きたまま腹に噛り付かれている。 「おいおい……おいおいおい!」 「狂ってやがるな……」  ビリィは顔面蒼白。  ガルムも嫌悪感を丸出しに、その光景を眺めている。  しかし、のんびりと眺めている暇もないらしく……。
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