第4話「ラン アンド 馬車」

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第4話「ラン アンド 馬車」

《ギィィィ????》  お食事中のゴブリン族を呆然と眺めるガルム達。  しかし、のんびりと構えていれば、  ゴブリン族のうち一匹がクル~リと振り返り、ガルム達の馬車に気付く。  すると……、 《ギィギィィイイイ》 《オンナァァッァ!!》 《ギュィイイイイイイイ!!!》  と、一斉に騒ぎ始める。  なんたって、ゴブリン族が御食事中の現場は、  まさに蟻塚のような巣(おそらくゴブリン族の城)の……前庭らしい。  そこに、デザートよろしく! と、ガルム達は世界を移動してしまったのだ。  ここまでくれば嫌でも理解できる。  理由は分からないけども、ここが元の世界であろうはずがない。  食われているガルムとビリィの仲間達はロクに抵抗もできなかったのだろう。  元の世界でさえ事態もつかめないままに騎兵隊に追い回されていたのだ。  さらに武装解除した者や、投降した者も多く、大半が武器を失った状態で──突然、この世界に放り出されてしまった……。  あとは、哀れも憐れ。  ここでゴブリンに襲われ、ランチとなったのだ。 「あー…オッサン」 「ガルムさんと、」 「ガルムさん。逃げましょうや」  ──賛成。 「ってか、よぉぉぉ! エリナ姉ちゃん……もう逃げてやがる!」 「流石は軍隊……引き際は良いな」  いや。感心してる場合じゃないッ!  ゴブリン族の前に転がっている死体には、騎兵隊の青い制服はどこにもない。  全て無法者(アウトロー)か、保安官補佐(サブシェリフ)賞金稼ぎ(バウンティハンター)のものだ。  …………。  ヤバい?  コクコクコク!  ガルムとビリィは無言で通じ会うと、  じゃ、「俺達も──」……と、ガルムとビリィは顔を見合わせてッ。 「三十六計──」「──逃げるに()かずっ!」  ガバチョと、馬具に取りつき馬を操る。 「ハイヤ! ハイヤー!!」  拍車をかけて馬を(けしか)けるとともに、鞭で尻を叩く。  こうなったら強引に突破するしかないだろう。  幸いにも、エリナ達が馬を駆って草原を先行し、突っ切って行ったおかげで多少は道ができている。  ……そこを行くしかない! 《ギィィィィィイイイ!!》 《オンナァァァッァァァ》  動き出した馬車を目掛けて反射的に追い出すゴブリンども。 「くそ! 遅いッ……これじゃ、追いつかれるぞ!」 「黙って運転しろ! 俺っちが応戦するッ」  馬車の荷台の幌を「バサァ!」と、跳ね上げて後部を開放するビリィ。  慣れた動作で拳銃(ドラグーン)を構えると、まるでガルムの様に二丁拳銃で狙いを付ける。  さらに、足で蹴飛ばすようにして木箱の蓋を開放すると、バリリッと、釘が弾け飛ぶ。  中からは──オガ屑に包まれた大量の銃器が姿を見せた。  その他の木箱の中にも、予備の銃や弾がギッシリと入っているようだ。 「へへッ、選り取りみど────うおおッ」 《ギィギィギイイイイ》 「うぉぉぉぉ! 来るんじゃねぇぇ!」  ややゴブリンの足の方が早いのか、馬車に追い(すが)ると──徐々に近づいてくる。  《ギィギィ!》と騒ぎつつ、手には削った骨のナイフやら、骨の中空部分を活用した吹き矢の様なもので武装していやがる。  ストン! キン! と馬車に突き刺さるそれを見てゾッとする。  尖った矢の穂先はドロリと汚れていた。恐らく毒付き……。 「ひぃぇええ……」  また奴らの表情と言ったら───……醜悪そのもの。  緑色の体表に乱杭歯が突き出し、頭部は剥げ散らかっていた。  目玉だけは大きく、黄色に濁ったそれが爛々と光り、  グワバッと開いた口からは紫色の舌が伸び、ベチョベチョと涎を撒き散らしている。 「き、きめぇぇっぇ…!」 《オンナアァッァァァァァ》 「オンナじゃねぇっつの!」  パパン! パパン! パパン! パパン! パパン  ガチン、ガチンッ! と、ガルムほどではないにしても、それなりに(さま)になる撃ち方で2丁拳銃を乱射する。  追いすがってきた先頭集団を撃ち倒すが──。 「すすす、す、すげぇ! な、なんて数だよッ」
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