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第3話「昆虫クイーンのユズ様ぁぁ」
ミーンミーンミーン……
う、うぅ…
ミーンミーンミーン……!!!
う、うぅぅぅぅ
ミーン!! ミーン!! ミーンミンミンミンミンミィィィーーー!!!
うるせぇぇぇぇ!!!
ガバしと、起き上がった光司の目の前に、美少女のドアップがある。
「あ、光司兄ぃ!!」
起きた!? と、心配そうな表情でのぞき込むのは、虫クィーンこと、斉藤ユズ。
巨乳ママの斉藤さんの一人娘だ。
熱い日差しを体でもって遮ってくれていたようだ。
かわりに、虫かごに残っていた蝉が光司の耳元で助けてくれ~と鳴いていたのだが…道理でうるさいわけだ。
と、それよりも、
頭の裏に感じる柔らかな感触は、ユズの太もも。
少女らしい柔らかな感触は、光司をして赤面させるには十分だ。
子供に恥じらっていると、思われるのも業腹(ごうはら)であったため、素早く起き上がる。
ユズは硬いアスファルトに直接座っていたため、あのきめ細やかなで健康的な肌が、アスファルトの凹凸に、赤く鬱血(うっけつ)していた。──子供故すぐに、肌の弾力でその色は回復していくのだが、ちょっとした献身に光司もバツが悪くなる。
こんなところで気絶していたとは、我ながら情けない。
「急に倒れるからびっくりしたよ~」
プゥと可愛らしく顔を膨らませると、スカートの裾をパンパンと払いながら起き上がると、キュっと光司の服を掴む。
その目が大丈夫? と、訴えている。
「お、おぅ。兄ちゃんなら無事だよ…って、何があったんだっけ」
ん~っと、何かが頭に……Σ
おぉぅ!!
蜘蛛、
くも、
クモさぁぁぁん!!!!
バババッバと、体を払いまくり、天敵が張り付いていないかと、まさぐる。
なし、
いない、
消えた…
ふっっふぅぅぅい!!
「蜘蛛さん?」
ユズが可愛らしく首を傾げながら、その手に持つ、神々しき魔王を見せる…
ヒィィィィィィ!!!
き、君ぃぃ、それ素手で掴んでいいやつなんか!?
アカン奴と違うぅぅんんん??
女の子は普通、キャーーーって逃げるんちゃうか?!
「きゃぁぁぁぁっぁぁ!!!」
かわりに叫んだのは光司その人。
「わ、わわわ? び、びっくりした? な、なに? 光司兄ぃどうしたの?」
蜘蛛を掴んだまま、にじり寄る鬼神のごとき美少女…いや、武将女(ぶしょうじょ)だ!
「頼みますぅぅ! ユズさま、女神様! それを遠くに捨てて…いえいえ、逃がしてあげてきてくれないでしょうか?」
蜘蛛を持ったままにじり寄るユズに恐怖を覚え、少しずつ後ずさる…
慎重な言葉を選んでいるのも、少女故どこに涙の琴線があるともしれない。
下手に、蜘蛛を殺せ! なんていうと逆効果の可能性もある。
ならば、正攻法でいくのみ。
ユズはいい子。
光司兄ぃの言うこと聞いてくれるよね? ね?
「え~~~~、スペルドゴニギウスは友達だよ?」
はぃ、スペルドなんたらさんは友達ですね…っていうかぶっちゃけ蜘蛛だよね。
イイから、こっち来んな~~!!!
あと、名前長すぎ!?
君、明日になったらその名前100%覚えてないよ?
ルイーダの酒場で張り切って名前考えるけど、あとでダサさに気付いて、もう一度アリアハンからやり直す羽目になるよ?
「お願いしますユズさま、…光司兄ぃは、実は…蜘蛛が苦手なんです!」
そう、子供には正攻法。
特に素直な女の子にはこれが一番!
男の子だったら逆に面白がって嫌がることを平気でしてくる可能性もあるから慎重にせねばならな、が。
ユズはとってもいい子なのです。
なんたって、斉藤ママの娘ですよ!?
オッパイは嘘をつきません。良い子になれる。
実際、ユズはちょっと寂しそうにスペルドさんを見つめた後、そっと、虫かごに視線を落とすと、ショボンとしてしまった。
あぅぅ…なんか悪いことした気分。
多分あれだ。
おいしい店を友達に紹介したら、凄くまずくて食べられない、と態度で示された感じ…
うん、ゴメン。
もうちょっと気を使うべきだったね…!
「ご、ごめんねユズ。…そ、そうだ。あとでウチに遊びに来なっ! アイスを御馳走するぞ!」
えぇい、こうなったら食い物で釣るのみ!
「えっ!? 本当!? いいの?」
おぅふ、思った以上の食い付き。
「いい、いい、オフコース!」
「何個? 何個まで? いくつ食べて良い??」
ン、何個? とな。
「ん~…何個でも好きなだけいいよ。というか、あれだよ、あのおっきなケースに入ったBOXタイプのやつだよ」
「えぇぇぇ!! あの大きい奴!?」
そーそー。あれだよ。
たしか、業務用スーパーでまとめ買いした奴がまだ2つほど残ってたはず。
バニラとストロベリー。
子供なら、まず外さない味だろう。
ミントとかは好みが分かれるからね。
「ありがとー!!!」
キュっと光司に抱き着く…いやぁ照れるな…
って、
蜘蛛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
ユズの手に握られる蜘蛛が必死に逃れようと前足4本を光司のズボンに這わせていた。
あっはぁぁぁぁぁぁん…………
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