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かさかさと葉擦れの音が響く庭に、月の光だけが落ちている。
記憶の中の小夜子が、物憂げな表情で月を見上げていた。
――月を見ると懐かしくなるの。
彼女は私に気付くと、そう呟いた。
月光を纏った姿はまるで、月宮に住まうという女仙か、彼のかぐや姫を思わせた。
――きっと、私は月から来たの。だから、もし死んだら……私はあの月へ還るわ。
小夜子はそう言って、遠い昔を懐かしむように瞼を閉じた。
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