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月下の夢語り
小夜子……君は今、どこにいるんだ?
葬儀はとうに済ませたというのに、妻がこの世を去ったという事実を、私は受け入れられずにいた。
まだ何処かにいるような気がして、私は家の中を彷徨う。
思い出の残滓はそこかしこにあるのに、君はもう何処にもいない。
無常な現実を突きつけられ、私は部屋の隅で丸くなるしかなかった。
どれくらいそうしていたのだろう。
夜風がカーテンを揺らし、青白い月明かりを招き入れた。
帯状の光がゆっくりと伸びてきて、うずくまった私の足元を照らす。
小夜子……?
私はふらりと立ち上がり、夜着のまま庭へ降りた――
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