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えー、当方、ありきたりな戦士となっております。
えー、まず、労基法からですね、はみ出るような世界の救済、致しません。これ大事。
深夜のテンションで世界を救う、これもまた致しません。
昼間の、至って健全な九時から五時の間、そしてそれとプラスして数時間ほど惰眠とさして変わらない無意味な労働を致します。
残業代、出ます。
昼食の冷たい弁当、五百円、給料から天引きで買えます。
珈琲、飲み放題です。
クーラー、少し強いです。
窓際、空いてません。
ああ、そうこうしているうちにまた、怒鳴るようなアラームが鳴ります。
警報。ココカラ先、戦場ニツキ、ゴ注意ナサレヨ。警報。警報。
警報は三回までに応答するルールがございますが、新人戦士のうちはいくら早くても許される、否、遅いと舌打ちとともにやり手の戦士に奪われるというシステムになっております。恐ろしくも。逃げるなかれ、戦士。
「御電話ありがとうございます。株式会社××フーズ、瀬戸がお伺い致します」
モンスター再来。はい、モンスターのご来場でございます。
何やらごちゃごちゃわめいてらっしゃいますが、そのままの意味で耳が痛いことこの上なく。
しかし残念ながら、何を言いたいのかミリも伝わって参りません。
えー、そうですね、とりあえず、お菓子の納入数が多かったことと、その請求がどうなっていたのかと、中のチョコレートが溶けている気がするが大丈夫なのかと。
なるほどなるほど。早い話が、このモンスターはクレーム一つにつきいくつかおまけをお付けしたいという主義者でいらっしゃるようです。
戦士のわたくしは眉を下げた表情を作ります。哀れっぽい声を絞り出し、
「ご迷惑おかけしてしまい申し訳ありません。納入数と請求の方、確認致しますので少々お待ち頂けますでしょうか」
ちらりと時計を確認すれば午後一時。今日の昼は何を食べましょうかね。
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