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「いやさ、もう、クレームクレームクレーム」
冷たい弁当をつついていると、隣のコンクリートの階段の上にどさりと腰掛けて、同期の深山が話しかけてきました。
手に下げたのは、マクドナルドの芳香漂うビニール袋。
「いいな、マック」
「いいだろう。ダブルチーズバーガーとあとなんかベーコン挟んだやつ」
「分けてもらえませんかね」
「まことに申し訳ありませんが昼食は完全セルフサービスとなっておりまーす」
笑いながら、深山はハンバーガーの包みを剥いてかぶりつきます。チーズがとろりと糸を引いて、熱かったのだろう深山がはふはふと吐息を漏らしています。
「いやさ、何でみんな、あんなにキレるんだろうな」
「うん」
僕も弁当の冷たい唐揚げを頬張りながら、頷きます。
「何が不満なんだろうな。で、何でその不満を大声で当り散らさなきゃならんのか、よ」
「クレーマーはクレーマーか上司かの怒りをぶつけられてるって話」
「え?」
「クレーマーには上がいて、そこの圧から受けたストレスを下の僕らにぶつけるってシステムになっているんだろうなって」
だって、そうでしょう。
僕もひょっとしたら、都合のいい、奥さんやおどおどして仕事のできない部下とかなんか、そんなやつがそばをうろちょろしていたら、当り散らさなきゃならんのかもしれないでしょう。
どうしてお前は、とゆでだこみたいに頭を赤くして、あるいは舌打ちしながらいいよそれ、やっとくから。なんて、邪険に睨みつけて。
そういうものなのかもしれないでしょう。
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