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「行きずりの貴方にこんなこと言ってもいいか分からないけど、あたし、男の人が嫌いなんです」
苦笑を込めた高らかな宣言。それは痛みを押し隠すかのようで、大変痛々しいものでした。
「嫌いなんです。でも、羨ましいんです。腕っ節も強くて、背も高くて、大きい手で何でも掴めるんじゃないかって、そう思ってるんです。羨ましいんです。だから嫌いなんです」
僕は自分の手のひらを見下ろしました。大きな、厚みはそこそこの、赤っぽい手のひら。
これは残念ながら、何でも掴めるマジックハンドではございません。ただの、大きくてかさかさした、下手っぴいの手です。
残念ながら、男は万能ではございません。
万能だったら、そう、まさに今、彼女にかけるべき言葉をやって、安心させ、或いは緊張を解いて泣かせてやるくらいはできたものでしょう。
こうやって、自分の手なんか見下ろして困惑したり、感傷的になったりなどしないはず。そうではないでしょうか?
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