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しかし、その夜のことだった。
僕の中にじんわりと濁った何かが広がっていく、そんな気持ち悪い感覚に襲われた。それは、自分に対する羞恥であり、嫌悪であった。
なんで、僕は声をかけてしまったんだ? 車椅子は立て直したけど彼女に触れることはできないって。どれだけ惨めなんだよ。
最初っから、誰かが助けに行くのを待つって選択肢もあったのに、出過ぎた真似をしてしまった。
その挙句、結局なんにもしてないのに彼女をカフェに連れていくし、気の利く話の一つもできなかった。
今考えれば僕だけが変に盛り上がっていなかったか? つまらない人間に思われたかもしれない。彼女はあの二時間嫌な思いを必死で押し殺していたんじゃないだろうか?
頭を抱え、両目を見開いて。
すぐに収まるが、数分したらまた湧き上がってくるそんな負の感情。
なぜか寝てしまえばその問題は小さなことになってしまい、次の日はうきうきで彼女とメッセージを送り合う僕がいる。
そうしている間の僕は笑っていた。その笑顔は決して卑しいものじゃなかった。ただただ、嬉しくてドキドキしてた。本当にそれだけだったはずだった。
でも、この後も、夜になると惨めな思いがふつふつと湧き上がってきた。
綺麗なはずの、自分の感情をどんどん塗りつぶしていく。
水彩画のような鮮やかで淡い思い出を、ゴテゴテとして重苦しい油彩の絵の具で塗りつぶしていってしまう。
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