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第二十七話「四天王 美少女宇宙人(4)」
リンジーとライが、日本全国の異変を感知した直後――
「上丸渕です」
「!」
ライの腕時計に、上丸渕から連絡が入った。
何かしらの方法で、ライたちが交戦状態にあり、余裕が無いことを把握したのだろう、上丸渕からの通信は、短いものだった。
「この炎は、紗優さんからのものです。では」
「!」
それだけを伝えると、通信は切れた。
(紗優が、これを……!?)
ライは、驚愕に目を剥いた。
※―※―※
少し時間は遡って。
紗優は、出来るだけライたちから離れようと、走り続けていた。
が、ふと、気になって、後ろを振り返った。
すると――
「何……あれ!?」
――ライたちがいる辺りの上空に、巨大な球状の何かが浮かんでいた。
紗優の脳裏に、ライの言葉が思い出される。
『紗優は、遠くへ逃げろ!』
紗優は、
でも……私は……!
と、意を決して、来た道を、急いで戻って行った。
暫く行くと、紗優は、退避して来た特殊部隊の男二人と出会った。
紗優は、見覚えのある、頬に傷のある大柄な男を見た。男も、紗優の事を覚えているようだ。
紗優は、
「ライ君たちは、どうなっているんですか!? あの大きな球は、何なんですか!?」
と、訊ねた。
だが、男は、
「俺にも分からん」
と言った。
そこで、紗優は、
「望遠鏡……は無いですよね。双眼鏡を持っていませんか?」
と聞いた。
もう一人の男が持っていたので、借りて、遠くに見える球状の物体に向けて、覗いてみると――
「!」
ライとリンジーが、数多の氷柱の中に閉じ込められ、連続で攻撃を受け、防戦一方になっているのが分かった。
助けないと! ライ君とリンジーちゃんが、死んじゃう!
そう焦る紗優だったが――
でも……どうやって!? 私には、何の力も無いし……
と、俯く。
その時。
ふと、紗優は思い出した。
そうだ! ガスコンロ!
家で料理をしている時に、リンジーは、ガスコンロの火を〝切り取って〟、自由自在に操っていたのだ。
炎がたくさんあれば、きっと、リンジーちゃんの力になれる!
そう考えた紗優は、具体的に何をすれば良いかを、必死に考えた。
出来るだけ、大きな炎……そして、たくさんの炎……何かを燃やす……? 紙? 本? ううん、もっと大きな……車? ううん、ダメ。それよりも、もっと大きな炎が上がる何か……
必死に頭を回転させ続けた紗優は――
そうだ!
と、思い付いた。
そして、頬に傷のある特殊部隊の男に懇願した。
しかし、男は、
「悪いが、無理だ」
と、首を振った。
国からの特別な任務を負っているライ、そして美少女宇宙人リンジーと共に暮らしているとはいえ、紗優は、一般人だ。
ただの一般人の頼みを聞く事は、難しかった。
が、紗優は、食い下がった。
「お願いします!」
紗優は、頭を下げ、必死に訴え続けた。
「このままじゃ、ライ君とリンジーちゃんが! いえ、それだけじゃなくて、地球が破壊されて、人類が滅んでしまうんです! だから、どうか、お願いします!」
ひたすら頭を下げ続ける紗優を見て、男は、息を一つすると――
「分かった。部隊長に、聞くだけ聞いてみる」
と言った。
その言葉に、紗優は、顔を上げ、
「ありがとうございます!」
と、明るい声で言った。
男は、防弾ヘルメットの側面に手を当て、小さな四角いボタンを押した。
どうやら通信機能がついているらしく、男は、通信先の部隊長に事情を説明する。
すると、とある建物のモニタールームにいる部隊長の男が、答えた。
「俺の一存では、何とも言えんな……」
だが、その直後――
「良いでしょう。私が許可します」
部隊長の直ぐ側にいた、紫スーツに身を包んだ男――上丸渕が、眼鏡の位置を直しながら、そう呟いた。
紗優が頼んだのは、日本中のガソリンスタンドを炎上させる、という事だった。
上丸渕により、日本全国に三百名いる特殊部隊全員と、十五万人以上いる陸上自衛隊員、そして、二十五万人以上を有する四十七都道府県の警察に協力が要請された。
そして、それぞれの組織が、手分けして、日本全国に三万カ所近くあるガソリンスタンドに、次々に火をつけて、ガソリンに引火させた。
その結果、日本中のガソリンスタンドから、巨大な炎が燃え上がっていった。
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