第二十九話「四天王 美少女宇宙人(6)」

1/1
前へ
/99ページ
次へ

第二十九話「四天王 美少女宇宙人(6)」

 険しい表情を浮かべるライを見て、ケイシーは、 「そう言えば、言うのを忘れていたのだ」  と言った後、 「自爆魔法術式を破壊したければ、まずは、この鎧を何とかしなければいけないのだ」  と、自身の胸――氷の鎧に触れた。  そこで、ライは、試しに、ケイシーの胸の皮膚に脱がし魔法を掛けようとした。  ――が、氷の鎧の魔力がそれを妨げ、発動出来なかった。 (なるほど……)  ライは、 「じゃあ、お前の鎧を脱がすまでだ!」  と叫び、 「『脱がし魔法(イレイズ)』!」  と、脱がし魔法をケイシーの氷の鎧に向けて放った。  ――その直後。 「! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』!」 「『(ファイア)』! 『(ファイア)』!」  飛んで来た二本の氷柱を、慌ててライは、脱がし魔法で迎撃した。  同じく、リンジーも、氷柱を炎魔法で相殺する。  これまでの戦闘で、既にかなり魔力を消耗している二人は、それだけで、それぞれ口許から新たな血が流れる。  それを見たケイシーは、口角を上げつつ、 「もう一つ、言い忘れていたのだ」  と、手を上に掲げて、四本の氷柱を頭上に出現させながら、 「当然ながら、ケイシーも攻撃を続けるのだ。魔力が尽きて、ケイシーに殺されないように、せいぜい頑張るのだ」  と言うと、氷柱を二本ずつ、ライとリンジーに向けて飛ばした。 「『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』!」 「『(ファイア)』! 『(ファイア)』!」  それを迎撃する二人。  ライは、脱がし魔法で氷柱の対処をしながら、リンジーを一瞥した。  リンジーは、先程の攻防により、疲労の色が濃く、限界が近いように見えた。 (リンジーは、さっきので、かなり消耗している! 俺がやるんだ!)  そう決意すると、ライは、氷柱を迎撃しつつ、脱がし魔法を立て続けに放った。 「『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』!」  その結果、無理が祟って、ライは吐血する。  ――が、ケイシーの氷の鎧は、脱げない。  それでも、ライは、脱がし魔法を発動し続ける。 「『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』!」  ライの目、耳、鼻から出血する。  ――だが、やはりケイシーの氷の鎧は、脱がせない。  そんなライを見て、ケイシーは、 「無駄な足掻きなのだ」  と、嘲笑する。  が、尚も、ライは、魔法を使い続けた。 「『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』!」  ライの全身から、血が噴き出す。  ――しかし、そこまでしても、ケイシーの氷の鎧を脱がす事は出来ない。  ケイシーは、 「無駄な努力を続ける事は、なかなかに滑稽なのだ」  と、ライを嘲る。  ――が、その直後。 「!? 何なのだ、これは!?」  と、ケイシーは声を上げた。  ライは、 (諦めてたまるかああああああああああ!)  と、悲鳴を上げる身体に鞭を打ち、更に、魔法を唱え続ける。 「『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』! 『脱がし魔法(イレイズ)』!」  ――すると―― 「そんな……!?」  ――ケイシーの氷の鎧が、消滅し――裸体が露になった。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」  息を切らしながら、ライは、ケイシーに向かって、震えながら手を翳す。  そして、ライは、ケイシーの体内にある自爆魔法術式――心臓に向かって、脱がし魔法を発動しようとした。 「『脱がし(イレ)――』」  ――だが、次の瞬間―― 「ぐはっ!?」  ライの身体を、前後から、四本の氷柱が貫いていた。 「隙あり、なのだ」  と、目を細めるケイシー。 「ライ!」  悲鳴を上げるリンジー。 「鎧を脱がせたと思ったのだ? 残念。ケイシーが、わざと自分で鎧を解除したのだ。お前に隙が出来るように」  得意顔で、そう解説するケイシー。  先程、ケイシーは、リンジーに向けて放った二本の氷柱を、途中で軌道修正し、鎧が脱げたと思って隙が出来たライの背後から襲い、その一瞬後に、正面から別の氷柱によって、攻撃したのだった。  大量に吐血し、落下して行くライ。  リンジーが、ライを助けようと、飛行魔法で飛んで行くが―― 「! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』!」  襲い来る氷柱が行く手を遮り、静止と迎撃を余儀なくされる。  そんなリンジーに対して、ケイシーは、 「やっと一人、片付いたのだ。助けになんて行かせないし、回復魔法も使わせないのだ」  と、冷酷に言って、氷柱を放った。 「くっ! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』!」  リンジーは、それを炎魔法で相殺する。  助けに行きたいが、行けない。  そんな、もどかしい思いを抱えた、リンジーの表情を見たケイシーは、 「そんなに、あの地球人が心配なのだ? それなら、寂しくないように、お前も同じ目に遭わせてやるのだ」  と言うと、 「『氷獄(アイスケージ)』!」  と、リンジーに向かって、両手を翳した。  先程聞いた、その魔法名に、リンジーが身体を強張らせる。  ケイシーは、 「そう身構えなくても良いのだ。ケイシーの魔力もかなり減っているから、さっきみたいな大きなのは、もう無理なのだ」  と言った。  その言葉通り、出現した氷柱群がリンジーを取り囲んで行くと、先程の半分程の大きさの球状になった。だが、それでも、夥しい数である事には変わりない。  ケイシーは、 「では、そろそろ、処刑の時間なのだ。裏切り者」  と言うと、手を掲げて、 「死ぬのだ」  と、勢いよく振り下ろした。  その直後、全ての氷柱が、一斉にリンジーに襲い掛かる。 「くっ! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』! 『(ファイア)』!」  必死に迎撃するリンジー。  しかし、全ての氷柱を相殺することなど出来ず――  数多の氷柱が、同時にリンジーに迫る。  迫り来る幾多の氷柱を見ながら、リンジーは、  紗優……守れなくて、すまない……  と、大切な友達に思いを馳せた。  そして、  ……ライ……! ……ライ……!!  と、ライに対する、言葉に出来ない感情を、心の中でリンジーが叫んだ瞬間―― 「がはっ!」  ――貫かれた。 「……なん……で……!?」  ――ケイシーの身体が、ライの手刀によって。  その直後、リンジーの至近距離で静止していた氷柱群が、全て消える。 「ライ!」  ライを見たリンジーが、思わず声を上げる。  胸を貫かれたケイシーは、絞り出すように声を発した。 「……さっきの……攻撃は……ケイシーを……油断……させる……ために……わざと……食らった……のだ……?」  その質問に、ライは、 「そうだ」  と答えた。  それを聞いたケイシーは、数瞬の間の後―― 「……これで……お前も……人殺し……なのだ……! ……今……どんな……気持ち……なのだ……?」 「!」  ――両の口角を上げた。  そして、ケイシーは、更に続けた。 「……お前……もしかして……これで……自爆を……防げた……と……思って……ないのだ?」 「!?」  そう呟くと、ケイシーは、 「……あは……は……はははは……!」  と、笑った。  ケイシーは、更に吐血しつつも、昏い笑みを浮かべる。 「……心臓を……破壊した……場合も……自爆魔法が……起動……するように……もう一つ……別の……術式が……組み込まれて……いるのだ……!」 「「!」」  その言葉に、目を剥くライとリンジー。  その直後、ケイシーの体内から、恐ろしい程の魔力が膨張して行く。 「……お前……たちは……どちらに……しても……終わり……なのだ……! ……あはは……はははは……!」  ケイシーの笑い声が響く中、ケイシーの魔力は、更に膨れ上がって行った。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加