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第二十九話「四天王 美少女宇宙人(6)」
険しい表情を浮かべるライを見て、ケイシーは、
「そう言えば、言うのを忘れていたのだ」
と言った後、
「自爆魔法術式を破壊したければ、まずは、この鎧を何とかしなければいけないのだ」
と、自身の胸――氷の鎧に触れた。
そこで、ライは、試しに、ケイシーの胸の皮膚に脱がし魔法を掛けようとした。
――が、氷の鎧の魔力がそれを妨げ、発動出来なかった。
(なるほど……)
ライは、
「じゃあ、お前の鎧を脱がすまでだ!」
と叫び、
「『脱がし魔法』!」
と、脱がし魔法をケイシーの氷の鎧に向けて放った。
――その直後。
「! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』!」
「『炎』! 『炎』!」
飛んで来た二本の氷柱を、慌ててライは、脱がし魔法で迎撃した。
同じく、リンジーも、氷柱を炎魔法で相殺する。
これまでの戦闘で、既にかなり魔力を消耗している二人は、それだけで、それぞれ口許から新たな血が流れる。
それを見たケイシーは、口角を上げつつ、
「もう一つ、言い忘れていたのだ」
と、手を上に掲げて、四本の氷柱を頭上に出現させながら、
「当然ながら、ケイシーも攻撃を続けるのだ。魔力が尽きて、ケイシーに殺されないように、せいぜい頑張るのだ」
と言うと、氷柱を二本ずつ、ライとリンジーに向けて飛ばした。
「『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』!」
「『炎』! 『炎』!」
それを迎撃する二人。
ライは、脱がし魔法で氷柱の対処をしながら、リンジーを一瞥した。
リンジーは、先程の攻防により、疲労の色が濃く、限界が近いように見えた。
(リンジーは、さっきので、かなり消耗している! 俺がやるんだ!)
そう決意すると、ライは、氷柱を迎撃しつつ、脱がし魔法を立て続けに放った。
「『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』!」
その結果、無理が祟って、ライは吐血する。
――が、ケイシーの氷の鎧は、脱げない。
それでも、ライは、脱がし魔法を発動し続ける。
「『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』!」
ライの目、耳、鼻から出血する。
――だが、やはりケイシーの氷の鎧は、脱がせない。
そんなライを見て、ケイシーは、
「無駄な足掻きなのだ」
と、嘲笑する。
が、尚も、ライは、魔法を使い続けた。
「『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』!」
ライの全身から、血が噴き出す。
――しかし、そこまでしても、ケイシーの氷の鎧を脱がす事は出来ない。
ケイシーは、
「無駄な努力を続ける事は、なかなかに滑稽なのだ」
と、ライを嘲る。
――が、その直後。
「!? 何なのだ、これは!?」
と、ケイシーは声を上げた。
ライは、
(諦めてたまるかああああああああああ!)
と、悲鳴を上げる身体に鞭を打ち、更に、魔法を唱え続ける。
「『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』! 『脱がし魔法』!」
――すると――
「そんな……!?」
――ケイシーの氷の鎧が、消滅し――裸体が露になった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
息を切らしながら、ライは、ケイシーに向かって、震えながら手を翳す。
そして、ライは、ケイシーの体内にある自爆魔法術式――心臓に向かって、脱がし魔法を発動しようとした。
「『脱がし――』」
――だが、次の瞬間――
「ぐはっ!?」
ライの身体を、前後から、四本の氷柱が貫いていた。
「隙あり、なのだ」
と、目を細めるケイシー。
「ライ!」
悲鳴を上げるリンジー。
「鎧を脱がせたと思ったのだ? 残念。ケイシーが、わざと自分で鎧を解除したのだ。お前に隙が出来るように」
得意顔で、そう解説するケイシー。
先程、ケイシーは、リンジーに向けて放った二本の氷柱を、途中で軌道修正し、鎧が脱げたと思って隙が出来たライの背後から襲い、その一瞬後に、正面から別の氷柱によって、攻撃したのだった。
大量に吐血し、落下して行くライ。
リンジーが、ライを助けようと、飛行魔法で飛んで行くが――
「! 『炎』! 『炎』!」
襲い来る氷柱が行く手を遮り、静止と迎撃を余儀なくされる。
そんなリンジーに対して、ケイシーは、
「やっと一人、片付いたのだ。助けになんて行かせないし、回復魔法も使わせないのだ」
と、冷酷に言って、氷柱を放った。
「くっ! 『炎』! 『炎』!」
リンジーは、それを炎魔法で相殺する。
助けに行きたいが、行けない。
そんな、もどかしい思いを抱えた、リンジーの表情を見たケイシーは、
「そんなに、あの地球人が心配なのだ? それなら、寂しくないように、お前も同じ目に遭わせてやるのだ」
と言うと、
「『氷獄』!」
と、リンジーに向かって、両手を翳した。
先程聞いた、その魔法名に、リンジーが身体を強張らせる。
ケイシーは、
「そう身構えなくても良いのだ。ケイシーの魔力もかなり減っているから、さっきみたいな大きなのは、もう無理なのだ」
と言った。
その言葉通り、出現した氷柱群がリンジーを取り囲んで行くと、先程の半分程の大きさの球状になった。だが、それでも、夥しい数である事には変わりない。
ケイシーは、
「では、そろそろ、処刑の時間なのだ。裏切り者」
と言うと、手を掲げて、
「死ぬのだ」
と、勢いよく振り下ろした。
その直後、全ての氷柱が、一斉にリンジーに襲い掛かる。
「くっ! 『炎』! 『炎』! 『炎』! 『炎』! 『炎』! 『炎』! 『炎』! 『炎』! 『炎』!」
必死に迎撃するリンジー。
しかし、全ての氷柱を相殺することなど出来ず――
数多の氷柱が、同時にリンジーに迫る。
迫り来る幾多の氷柱を見ながら、リンジーは、
紗優……守れなくて、すまない……
と、大切な友達に思いを馳せた。
そして、
……ライ……! ……ライ……!!
と、ライに対する、言葉に出来ない感情を、心の中でリンジーが叫んだ瞬間――
「がはっ!」
――貫かれた。
「……なん……で……!?」
――ケイシーの身体が、ライの手刀によって。
その直後、リンジーの至近距離で静止していた氷柱群が、全て消える。
「ライ!」
ライを見たリンジーが、思わず声を上げる。
胸を貫かれたケイシーは、絞り出すように声を発した。
「……さっきの……攻撃は……ケイシーを……油断……させる……ために……わざと……食らった……のだ……?」
その質問に、ライは、
「そうだ」
と答えた。
それを聞いたケイシーは、数瞬の間の後――
「……これで……お前も……人殺し……なのだ……! ……今……どんな……気持ち……なのだ……?」
「!」
――両の口角を上げた。
そして、ケイシーは、更に続けた。
「……お前……もしかして……これで……自爆を……防げた……と……思って……ないのだ?」
「!?」
そう呟くと、ケイシーは、
「……あは……は……はははは……!」
と、笑った。
ケイシーは、更に吐血しつつも、昏い笑みを浮かべる。
「……心臓を……破壊した……場合も……自爆魔法が……起動……するように……もう一つ……別の……術式が……組み込まれて……いるのだ……!」
「「!」」
その言葉に、目を剥くライとリンジー。
その直後、ケイシーの体内から、恐ろしい程の魔力が膨張して行く。
「……お前……たちは……どちらに……しても……終わり……なのだ……! ……あはは……はははは……!」
ケイシーの笑い声が響く中、ケイシーの魔力は、更に膨れ上がって行った。
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