第一話「二度目の転生と脱がし魔法の悪用」

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第一話「二度目の転生と脱がし魔法の悪用」

 空間転移魔法の光を抜けたライが辿り着いたのは――  現代日本、愛知県の、N市だった。ライの故郷であるこの街には、生まれ育った実家が今もあり、母親が一人で暮らしているはずだ。ちなみに、父親は、ライの幼少時代に、若くして病死している。  ――地方都市、N市。人口二百三十万人の中核都市であり、玄関口であるN駅前にはヒットランドスクエアや、駅前再開発にて撤去が危ぶまれながらも百万人を超える市民たちの署名運動により存続することになったララちゃん人形などがある。  が、何と言っても味噌カツ、味噌煮込みうどん、味噌おでんと、味噌を冠するB級グルメが有名だ。  この街では、「新幹線でN駅のプラットフォームに降り立った瞬間に赤味噌の匂いがする」だとか、「一家に一つは味噌樽や味噌専用の冷蔵庫がある」等の噂が絶えない。  さて。  季節は秋――十月初旬。  夕暮れ時、とあるマンションの裏に出現したライは、周囲を見回した。 (一年振りのN市か。……懐かしいな)  こうして転生し直して戻って来るまでの間に、どれだけ時間が経ったかは、自然と分かった。その辺りは、事前に脳内にインプットしてくれているらしい。  マンションの表側に行くと、公園があったので、トイレに駆け込んで、鏡を見てみる。  すると―― 「おおお!」  そこには、ラフな格好をした、普通のルックスの黒髪少年がいた。  ごく平凡な、平均的な容姿だ。  しかし、二度の転生をする前は、幼少時代からずっと、周りの女子たちから、 「ブサイク!」 「キモッ!」 「近寄るな!」  と、散々罵詈雑言を浴びせられて来たライにとっては、それで十分だった。  そして、年齢は――十五歳だ。その辺の知識もまた、どれだけ月日が経ったかと同じく、自然と分かるようになっているようだ。 (若い! それに、普通のルックス! ようやく、ちゃんと転生出来たって感じだ!)  高揚感に包まれながら、ライはトイレから出て来る。  すると―― 「ん?」  ブランコに、セーラー服姿の少女が座っていた。胸元を見ると、十字架がついたネックレスをしている。  どうやら、ライの後から来たらしい。  俯き、溜息をつく彼女は、金髪碧眼の美少女だった。  中学生だろうか。外国の子なのか、ハーフなのか分からないが、パッチリとした綺麗な碧い瞳をした彼女は、ポニーテールがよく似合っていた。  セーラー服を下から突き上げるは、まだ幼さの残る顔に不釣り合いな、豊かな胸。  その男心を擽るアンバランスさが決め手になり、ライは、美少女の前へと歩いて行った。 「……え? な、何よ!?」  突然目の前に現れ仁王立ちする見知らぬ少年に対して、美少女は動揺を隠すかのように、強気な眼差しを向ける。  美少女に睨まれつつ、ライは口角を上げると、彼女に向けて手を翳した。 「『脱がし魔法(イレイズ)』! 脱げろ!」  一瞬の間があって―― 「は!? あんた何言って――」  ――美少女の服が全て消滅した。 「――え!?」  自分の身体を見下ろした美少女が、何が起こったかを理解した直後―― 「きゃあああああああああああ!」 「ふおおおおおおおおおおおお!」  羞恥で悲鳴を上げつつブランコから降り、自分の身体を抱き締めながら地面にしゃがみ込む美少女と、美少女が気付くまでの数瞬で、豊満な胸とその頂の桃色の突起、そして下腹部とその奥の秘密の花園まで確りと目に焼き付けつつ、歓喜の咆哮を上げるライ。 (来た来た来たああああああああ! これだ!! これだよ!!! 天国はあったんだ!!!!)  ライは、裸の美少女を放置したまま、繁華街の方へと走って行った。  そして、女性が大勢いる事を確認すると、手を翳し、 「脱げろ!」  と呟いた。  その一瞬後―― 「「「「「きゃあああああああああああ!」」」」」  先程よりも早く、『脱がし魔法』は発動し、女性たちは皆、裸になっていた。  どうやら、最初の美少女の時は、転生した直後で、新たな身体で『脱がし魔法』を使う事にまだ慣れていなかったため、発動に時間が掛かったらしい。 「うひょおおおおおおおおおおお!」  女性たちの裸をしっかりと脳内フォルダに保存しつつ、ライは肌色だらけの繁華街を駆け抜けていった。  ちなみにその際、筋肉質なスキンヘッド男が、 「ま、まさか俺も!?」  と言いながら、手で自分の胸と股間を隠しながら頬を赤く染めていたが、ライが脱がすのは女性のみなので、男性は全員無事だった。  尚、いつまで経っても自分の服が脱がされない事に気付いたスキンヘッド男が、 「なんだ……俺は違うのか……」  と、何故か残念そうに呟いた言葉は、秋風にさらわれて、誰の耳にも届かなかった。
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