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「久しぶり、今どこに居る?」
十年ぶりだろうか、懐かしい友人の声だった。俺はスマートフォンの電話の音に目を覚まし、その声を聞いたのだった。
「それが、どこだか分からないんだ。心臓が苦しくて病院に運び込まれた事までは覚えてるんだが。何だか狭っ苦しい箱の中に居るみたいだ。ちょっと待ってくれ······ダメだ。とても出られそうにない。」
「······狭っ苦しい箱の中?·····お前んちの家の電話番号まだ変わってないよな。」
「ああ、昔のまんまだ。家には家内と子供が住んでる。」
「分かった。待ってろ、一旦切るぞ。」
こうして、俺は墓場から掘り起こされた。
病院で心臓が止まって脳波も確認できなくなって何日も経ったので、俺の葬式が行われていたってわけ。
辺鄙な田舎の事で、まだ土葬の習慣が残っていたお陰で九死に一生を得る事が出来た。
それにしても持つべきものは巡り合わせのいい親友だぜ。奴があのタイミングで電話くれて、家族に問い合わせてくれなかったら、間違いなくお陀仏だった。
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