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そいつは突然現れた。
ふと、声がした方へと振り返った先には随分涼しげな顔して突っ立ってる奴がいた。どうやらそいつが話しかけてきたらしい。
「まず最初にオレの質問に答えろ。」
「・・・・は?」
男・・・?
灰色のフリースケープを身にまとった、性別の分からないそいつの肌は恐ろしいほど白くて。紺色の現代社会にはあまり見ないような深い色をした髪の毛はサラサラと風に揺れていて、見れば胸元辺りまでの長さがある。
外見的に足も腕も細いし、女に見えないことはないけど。何しろ目が死んでる、何故かその真っ黒な目は少し死んだ魚の目を思わせるような不思議な印象だ。
声は・・・女に、聞こえなくもない。低いが。
一人称は"オレ"だし、やっぱり男なのか?
――ってそんな事よりまず先に、一番知りたいことがあるはずだろ。
何故目の前のそいつが俺を"見えてるのか"って事だ。
「やっぱり、俺は死んでなかったんだな!?」
幽霊が人に見えるはず無い。よく私は霊感がありますなんて言ってる人もいるが、俺はアレは嘘だと思ってる。心霊番組なんかもってのほかだ、あんなのデマだデマ。
ってことは、運悪く幽霊になんかなってしまった俺が人間に!男・・か女かわかんないけど、とりあえず人間に話しかけられた、すなわち存在を確認されたってことは、俺は・・・幽霊じゃないって事になる!
「やっぱり夢か・・・痛みとかあって変にリアルだったけど、そうだよな。幽霊なんかいるわけないし。」
なんて安心して笑っていれば、そんな俺を見ても無表情なままの目の前にいるそいつは平然と言って見せた。
「いや、オマエは死んでる。死んでまだ数時間の新米幽霊ってところだ、それにこれは夢じゃない。」
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