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確か、その模試で一位になったのは女の子で私と同い年の中学生で、二位との差を大きく広げた一位だった。
というより、満点だった。
塾で、その話を聞いた時目を大きく見開いて驚いた。高校生すら満点を取れないようなテストで、しかも模試で満点を取るなんて異例のほかないから。
それがどんな人なのか気になってどの塾に通っているのかを聞こうとしたって、なにも情報は出ない。
名前も顔も知らない彼女は、塾に通っていなかったから。
――今思えば凄く悔しく思う。
49位なんて半端な順位の私が一位にイラつきを感じるだなんて、それこそ馬鹿げた話だけれど、それでも悔しい。
母の関心は、次第に私へ向かなくなった。
「やめて・・・、もう、やめてっ」
「はあ?なんか気持ち悪い声が聞こえるんですけどー」
煩い。
いつしかイライラを目の前で繰り広げられるイジメの行為に向けていた私は、チラリとその光景に目を向けた。
這いつくばって黒い髪の毛を一つに束ねた彼女は泣きながら虐めてる相手に許しを乞う。
そんな彼女を面白がって見るクラスメート、気味悪そうに頭を踏みつける金髪の男、それを横目に黙って見ている私。
彼女がこんな扱いをされるのは、とても単純な理由だった。
「アニメオタクとかきめぇんだよ!」
彼女が学校に何を間違えたのかアニメ雑誌を持ってきたから。
イジメというのは実に単純で、世間ではあまり注目されてないようなジャンルを好きになる人をすぐにオタクオタクと言って気味悪い顔をして見つめる奴等がいる。
まあ、私も否定はしない。少し思ってるから。
その日、運悪くクラスのリーダー的存在のその金髪に雑誌を持っていることがバレてしまった彼女は、一日でいつも続いていた平凡な日常が逆転した。
"木下夕貴はアニメオタクで気持ちが悪い"
そんな単純な理由で、人はこんなに残酷な事をするのかと少し驚いたけど。私は特に何もしない。
見てるだけ、手を貸さない。
――私には関係ないから。
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