2人が本棚に入れています
本棚に追加
「何見てんだよ、榎木」
突然聞こえた声と共に私へ注がれた視線に少し目を見開いて顔をあげる。
横目にそれを眺めていた私の表情は少し不機嫌そうに見えたらしく、金髪の注意をこちらへ向けるのには簡単だった。
クラス中が今、私を見ている。
邪魔すんなよ、何様だよって言うようなそんな鋭い目で、私を確かに見ている。
そして、木下夕貴も。
突然注がれた視線に一人驚いていれば、チッと小さく舌打ちをした金髪は大股開いてこちらまでズンズン歩いてきて、私の目の前まで来て口を開いた。
「お前、ムカつくんだよな。いつも私は偉いみたいな顔しててよ」
心外だ、別に私は偉そうになんかしてない。
くだらないって勝手に思うだけで、貴方達に関わるだけむだだと思っているから。別に偉そうになんかしてない、私は自分が偉いと思ったことすらない。
だから、私は真っ直ぐ金髪を見つめる。違う、そんなの思ってないって、またいい子ぶって。
「何だ?その目、何、文句でもあんの?とーっても偉い榎木さん」
「・・・別に、無いけど」
「無いって言う顔してないんだよな。つか、まずさ榎木って何だよ、お前キノコかよ。潤って名前も男みたいで何か微妙だし、存在感も微妙だよなお前って」
私は持っていたシャーペンを落としてしまった。
昼休み返上でまとめていたノートに書きこむために握り締めていたシャーペンを床へ落としてしまった。
存在感とかそういう事で吹っ切れたわけじゃない。名前を、・・・大切な名前を否定されたから。
微妙?ふざけるな、お前等よりずっと綺麗な名前だよ、母さんがつけてくれた、この世でたった一つの綺麗な名前。
それを、馬鹿にするだなんて。
「まあ、良いや。お前なんかつまんねーし、ああそうだ榎木、お前が腹空かせた木下に飯やれよ。ほら、これ」
つまらなさそうにした金髪は地面から腐ったような匂いを放つパンを手にして私に差し出し、面白そうに見ている。
クラス中もそうだ、木下夕貴以外私を今度は面白そうな顔で見てる。
だんだんと込み上げる感情に身をまかせて、後ろ姿を見せた金髪の背中に気づけば私は叫んでいて。
気づけば私は、良い子にあるまじき行為をしてた。
「・・・くだらない。」
最初のコメントを投稿しよう!