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-02 幽霊倉庫
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「此処?その倉庫って言うの。」
時間が経って今は夜中、私に拒否権はなく隣で怯えている木下夕貴と事実私は倉庫の前で突っ立ってる。
"幽霊倉庫"
最近、噂になるのが一番多いそこは、どうやら有名な心霊スポットらしく、もう何人もの人が肝試し感覚にその倉庫に足を踏み入れて"飲み込まれてしまった。"らしい。
テレビもネットも見ない私はそれが何なのか知らずに、待ち合わせた木下夕貴に訊ねてみれば酷く驚かれた。
あるはずのない場所に、現れる倉庫。
確かに近くに住んでいる私でさえ、こんな倉庫があるのは知らなかった。見るからに不気味な雰囲気漂うそれは、どこか古びていて取り壊しが決定されててもオカシクないだろう。
それを見上げる私の腕に巻きつくように近づいてくる木下夕貴を私は遠ざける。
「何よ。」
「だ、だって・・・怖くて」
「ただの古びた倉庫でしょ」
「榎木さんは怖くないんですか!?」
「・・・不気味だなとは思うけど。」
家に一度帰って、深夜の12時にしか現れないという噂に合わせて準備を済ませてきた私達は遊び感覚とはいえない格好をしている。
片手には懐中電灯、動きやすいスニーカーを履いて、動きやすい服装で。それは木下夕貴も一緒で、似たような格好になってしまった。
こんな時間に親が許してくれるはずがないって最初は思ったけれど、そもそも最近母親は仕事で家にすら帰ってこないので、そんなの気にしなくて良いと気づいた。
それで、カンニングをどうしてもバレたくない私は素直に倉庫前に立ってる。
「そう言えば、"キリュウ"って言う・・・」
「悪魔ですか?」
「ああ、それ。それは何なの?まず悪魔なんて此処にはいるわけないでしょう」
倉庫にいると金髪が言ってた悪魔というそれは、私は聞いたことすら無いような変なもの。
架空に作り上げたそれにただ驚かされてるようにも思えるけれど。
「キリュウは・・・私も噂で聞いたんですが、確か人の形をした悪魔で、この倉庫に迷い込んだ人間の魂を食べちゃうらしいんです。」
真剣な顔で木下夕貴はそう言った。
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