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木下夕貴はそう、悲しそうな顔で口にした。
自分が嫌いだって心底思ってるように、諦めたように小さく笑っているけど悲しんでる顔で。そんな複雑な顔に目を奪われて驚いていれば、懐中電灯を持つ木下夕貴の手が震えてるのに気づいた。
照らした光が小刻みに揺れて、辺りに小さな光が照らされる。
「ど、どうしたのよ」
「・・・っ」
「ちょっと、何!?」
揺れる光の意図が知りたくて、木下夕貴の顔を見てみればその顔は酷く青ざめたような顔をしている。
目は見開かれて瞳孔がかっ開いていて、震えている。目が身震いするように小さく震えて揺れていて、私の言葉なんて聞こえてないようにまっすぐ前を向いてる。
囚われたように離さないその視線に驚いて前を見てみるけど、目の前には何もない。物はおろか何一つない。
何も見えないんだ。
何に木下夕貴が怯えて目を奪われているのかも分からないまま、私は必死に木下夕貴に話しかけ続けた。
「何があったのよ!?アンタどこ見てるの!?」
いくら肩を掴んで揺らしてみても、怯えた眼球の前で手を振ってみたって、木下夕貴は少しも反応しない。
固まったように、そこに立ち止まってる。
何が起きたのか全然理解出来ない私はどうしたものかと考えるけれど、何が起こっているのか分からない以上なにも出来ない。
きっとビクビクしている木下夕貴の事だ、私を驚かせてるのかもしれない。きっと私が先に帰る道を歩いて行けば怯えてついてくることだろう。
「・・・私先に帰るわよ、怖いならついてきなさい。」
そんな風に一方的に話しかけて、一足先に歩きだした。
きっと後に怯えた木下夕貴が「嘘です!」なんて言ってガクガクした足で追いかけてくるんだろうって思って。
そうやって、一歩足を進めれた時、物凄い音が倉庫に響き渡った。
―――ガン!!!!
「・・・・嘘」
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