2人が本棚に入れています
本棚に追加
物凄い音と爆風に靡いた髪の毛に驚いて、後ろを振り返れば、そこにはもう木下夕貴はいなかった。
驚いてそこの辺りを探す様に視線をキョロキョロとさせて探し出せば、少し遠い先に壁に打ちつけられて気を失う木下夕貴を見つける。
投げられた・・・?
走ってそれに近づいて木下夕貴の顔を照らしてみれば、額には真っ赤な血がついていて、やはり壁で打ちつけたんだと気づいた。
「ちょっと・・・何が起こったの!?アンタなんで・・・起きなさいよ、目を覚ましてよ」
自分で壁に打ちつけたとは考えずらい。
誰かに打ちつけられたって事だろうか・・・いや、そもそもこの倉庫には私と彼女以外の人はいなかったはず。
・・・先ほどまで、彼女は何かに怯えてた。
目を奪われたように一点を見つめたまま、きっと何かに怯えてた。・・・それは何?
"「キリュウって悪魔がいて、人の魂を食らうらしい」"
頭に浮かんだその名前に思わず目を見開いて後ずさりする。
本当にそれがもし、いるとしたら。
私も危ない。
「・・・ヒッ・・・」
後ろ歩きで木下夕貴から離れて行く。恐ろしくてもう見つめることすらできない。
いくら周りを見渡したって、なにもいない。何も見えない、ここには私以外に動いてるものがいない。
なのに、この恐ろしさは何だろう。
「・・・!?」
倉庫のものに躓いて転んだ。チクリと痛んで掌を見つめれば、細く切り傷が出来ていてそれにも目を見開いた。
怖い、とてつもなく怖い。
開ききった目を両手で抑えて少し落ち着こうと考える。
――逃げれば良い。
逃げれば、私は助かるかもしれない。逃げきればいつも通り家に帰れて、そして寝てまた朝を迎えれば普通に戻る。
そう思い立って足早に立ち上がって出口へ急ぎ始めたとき、ふと自然と足が止まってしまった。
・・・・彼女はどうなるの?
振り返るその先に壁に寄り掛かる形で倒れて気絶している木下夕貴の姿が見える。ダラリと力無く座りこんでる。
私が逃げたら、彼女は逃げられない。
きっと彼女は此処に置き去りなままだ。いや・・・もしかしたら命すら失うかもしれない、キリュウに魂まで食べられて一生学校には来れないかもしれない。
親にも会えないし、大好きなアニメも見れない。きっともう、あの笑った顔を見ることも出来ない。
最初のコメントを投稿しよう!