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「・・・・っ!?」
驚いた。
本当に見えたんだ、キリュウが。
勢いよく叫んだ後、思わず目を見開いてみれば木下夕貴の足に絡みつくようにしている蔦のようなものを見つける。
木についてるような蔦みたいなそれだ。
驚いてそれを辿って行けば、木下夕貴が怯えたそれはすぐそこに存在してた。
目の前に広がる倉庫いっぱいの大きな体を持つそれは、大きな目玉のような歪んだ形の眼球の中心の黒い部分を私に向けている。
生き物・・・とすら呼べないようなその歪んだ奇怪な容姿は本当に目も当てられないほど酷いものだった。頭からはいくつも奇妙なものが生えていて、口のように開いたものからはベタベタと液体が垂れてくる。
怖いとか恐ろしいとか、そんなものじゃなかった。
見開いた目と冷や汗の伝う中、私は本当に目を離せられなくなってその大きな黒い目を見つめてる。
ジリジリと迫りくる恐怖と悪寒に驚いて手足が震え始める。ブルブルと音を立てるように震えて、へたりとまた尻もちをつくように座り込んでしまった。
私の力が緩んだことにより、先ほどよりスピードを上げて引きずられる木下夕貴の姿を見て、こんなんじゃいけないとハッとする。
怖い、怖いけど。
震えたままの手をぎゅっと握って、ガブリと手に噛みつけばほんのりと血が滲んでるその痛みのおかげか、何なのか少し治まってきた震えた手で、床に転がる鉄のとがった棒を掴んで私は走り出した。
これほど速いとは思わなかったけど。
「離して!彼女を離しなさい!アンタ変態なの!?女子高生の足をそんな汚い手で掴んで、警察呼ぶわよ!」
その鉄の棒を木下夕貴の足を掴んだ蔦の周りにあるジェルのような腕のそれに突き立てて、怒鳴った。
手なのか何なのか分からないが、そんなのは今どうでも良い。
勢いよく突き立ててぶっ刺したそれに、その怪物のような奇怪な生物は声とは思えない泣き声を上げて、思わず足から手を離す。
その隙に逃げれれば!
そう思い力一杯に木下夕貴を腕をに抱きあげて出口のある方へ駆けていこうと走り出して出口の見える位置まで走る。
「・・・・そんな、」
もう、出口は消えてなくなっていた。
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