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絶望的なその状況に目を見開いていれば、後ろでその奇怪な鳴き声が響き渡る。
終わりだ、こんなの逃げられるはずがない。
気づけば窓があったはずの場所にも何も、入口どころか人が通れるような逃げ口はどこにも見当たらない。
どうやら閉じ込められてるらしい。
本当に、ここがもし深夜12時にだけ現れる幽霊倉庫なのだとすれば納得がいく。もう12時は超えてる、ってことは・・・もう出られないってことじゃないだろうか。
少なくと明日の12時だとしたって、もう無理だ。あと23時間と少しをこの怪物から逃げながら耐えるなんて無理に近い。
先ほどの鉄の棒だって運よくたまたま当たっただけで、あんな怪物を私が倒せるはずもない。
こんなの、あんまりだ。
抱きかかえた木下夕貴をそっと地面へ降ろして、振り返るようにその奇怪な怪物へと視線を向ければ大きな目玉が私を囚えて離さない。
額に冷や汗が浮くのが分かる。
少しずつ迫るその奇妙な形の腕のようなものが、私の近くへ寄ってきて私の周りを巻くようにグルグル動く。
逃げたいけれど、不思議と体も足も動かないんだ。
もし、私一人の魂みたいなもので済むのならそれで良いかもしれない。それで木下夕貴が救われるのなら、良いかもしれない。
そんな風に思いながら首を絞めるように巻いて行くそのベタベタの触手のようなものに抵抗もせず、怪物の目を睨み上げた。
次第にそんな強気な目とは違い、苦しくなっていく首元を両手で押さえながら苦しく呼吸をするけど。
遠のく意識の中で、ぼんやりと浮き始める自分の体から木下夕貴を見下ろした。
ごめん、私が死ぬかも。
そんな風に心の中で謝って、諦めたように目を瞑った。
―――ブシュッ!
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