-02 幽霊倉庫

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何故か地面に打ちつけられるように落ちた私の体に、奇妙な音を立てた怪物。 打ちつけた背中が痛くて少し苦しく咳をしながら、霞む視界の中それを見ようとするともっと奇妙なものが広がってる。 「・・・!?」 私を先ほどまで殺そうとしてた怪物が、真っ二つに割れてる。いや切られた?切られた面からはドロドロと吐き気を誘うような物体が垂れ出ていて、気味が悪い。 ドロドロと垂れてきたベタベタの液体が頭や腕に垂れかかってきて、思わず顔をゆがめる。 「臭い」 湧き出る吐き気を押さえながら何が起こったのかと目の前の状況に目を向ければ、確かにいた。 私と木下夕貴以外の人間が。 「―――汚い、おかげで汚れた。」 怪物の頭の上でスラリと涼しげな顔で立っている女・・・多分女の人が、若干低めな声で不機嫌そうに呟いた。 灰色のフリースケープを着ていて、紺色のサラサラに靡いた長い髪の毛はとても綺麗でどこか透明感を思わせる。そして一番奇妙なのはその眼球だった。 通常の人の白目の部分は真っ黒に染まっていて、黒目に当たる部分は突きささるような水色をしていて。 冷たい目をしてる。酷い無表情で、文句を言いながら手に持った鎌みたいなものの刃先についた液体をどこから取り出したのか真白い布で拭いてる。 驚いてその女性から目を離すことが出来ない私と、その女性の恐ろしくも思える綺麗な瞳がパシッと合った時、女性は小さく口を開く。 「オマエか、オレを呼んだのは」 ヒヤリとした背筋をピシッと伸ばして、女性の言う言葉の意味を考える。 呼んだ?呼んでない、そもそも彼女の名前すら私は知らない。 とても中性的な印象だけれど、本当に綺麗な顔をしてる。穢れを知らないような真っ白な肌に、どこにそんな鎌を持てる力があるのかと思うほど細めの腕や足。 そして、顔のつくりがとても綺麗だ。作りものみたいに。 キョトンとしている私を少し面倒にでも思ったのか無表情なまま、目を合わせている彼女はまた言う。 「オレの名前はキリュウだ。オマエか?オレを呼んだのは」
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