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肌を触る温度とは真逆にカラリと光る太陽は眩しくて、そっと目を薄めながら薄い紙袋を手に学校から帰る。
職員室の窓から担任が少し悔しそうな顔をしているのが見えるけれど、そんなの俺には関係ない。
「――平凡な日だ。」
あの日は随分と平凡な日で、何の変哲もないようなそんな一日だった。
過去形だなんてどこか気が引けるけれど、今となっちゃ平凡だから。
少し暗くなった夕暮れ時の空を見上げながら何も思わずただただ帰宅路を歩くだけのような、そんな平凡。
楽しそうに会話を楽しみながら帰ってゆく人たちを抜けて、顔なんか上げて白い息なんて吐き出せば、もうこれで寒さは完成だ。
今日は暖かいかなと油断して家へ置いてきたマフラーが恋しい。
肌寒い首元を着用している制服のシャツの襟なんて立てて少しでもカバーすれば、何とかその恋しさは薄められた気になる。
まあ、寒いままだけれど。
ぼんやり、周りを囲う景色を眺めて今の季節を思う。
ああ、そういやそろそろクリスマスだったな。
派手目なイルミネーションに道行く道に飾られる木のてっぺんに飾られた星型のライト。どの店もクリスマスフェアなんて言って緑と赤色の商品を見せつけては人を呼び寄せてる。
一人の俺には関係ない。
そう思った時だった。
"「オマエ、そこじゃない。右に曲がれ」"
突然聞こえたその声に一人立ち止まる。その声は何だか変な声だった。
声・・・なんだろうか、音と言ったほうが正確なのかもしれない。
ノイズのかかった酷く耳ざわりな音が表現した言葉の意味を理解するには俺は馬鹿すぎたみたいだ。
どこから声が聞こえたのか、どこからか音を送信でもして耳に鳴らせているのだろうか。様々な変な事を思いついて周りをキョロキョロと見渡したって。
「聞こえてないのか?」
俺以外は平然と今を生きている。
買い物を続けて、イチャイチャを続けて、食事を続けて、平然を続けて。
・・・・平凡なままだ。
何だ気のせいかと、少し疲れているのかもしれないなと一人で笑いそのまま歩きだそうとした時。
どこかで悲鳴が上がった。
「・・・・!?」
"「だから、言っただろう。」"
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