2人が本棚に入れています
本棚に追加
――チクリ。
そんな小さな痛み。
いや、一つ瞬間だけでも絶叫するほどの痛みは感じたのかもしれない。・・・少し曖昧でハッキリと覚えているわけじゃなく、本当にどこか薄らと。
先ほどの自分の死体のあった場所から湧き出る吐き気を抑えてやっと公園までやってきて、我慢しきれずにトイレを借りて嘔吐をした。
どこか、死んでるのに吐瀉物(ゲロ)は出るんだな。なんて薄らと感心さえしながら。
そんな風に少しずつハッキリとしてきた頭の中で一体何が自分の身に起ったのかを整理しようと額に手を当てる。
ぼんやりと浮かぶ、あの景色を思い出す様に。
「・・・確か、ファストフード店の角を曲がって大通りへ出て。何か明るかったような、・・・あクリスマスだ。そうだ、クリスマスフェアをしてて、それで・・・」
―――どうしたんだっけ?
周りがとても幸せそうに明るくライトアップされた人工的な光を見上げて笑顔だったのは覚えている。それとクリスマス特有のあの緑と赤で装飾された飾りや小物達も。
ケーキ屋の入口なんかにはドデカくて真っ赤な文字で「クリスマスケーキ予約受付中!」なんて宣伝してあって、店も宣伝しなきゃ客が寄り付かないのか、大変だなって思ったのも覚えている。
けど、何故俺が仮に死んだのかは思い出せない。
それより何故俺はあの場で立ち止まったんだろうか、袋を持って早く帰宅しようとしていたはずなのに。
「・・・声だ。」
声、声と呼べるかどうかも分からないようなノイズのかかった、そんな声。
周りはその声は聞こえていないらしく俺にだけ通じていたその声は、確か音に近いような声で。高音と低音が混ざったような酷く聞きたくないような音だった。
確か、それが聞こえてきた時何が起こったのか分からなかった俺はその場で立ち止まって周りも同じかどうか確認したはず。
・・・・あの声、何だったんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!