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そこで急に恐怖に駆られた。そうだ。僕の一生がここで終わってしまうとして、もし僕に二重にからまるポッドと砂浜の二つの一生のうち、この砂浜での暮らしの方が幻想でポッドの暮らしが真実だとしたら。
感覚を信じるとそんなはずはない、と思う。けれどもポッドではそもそも五感に触れるものがなかった。
けれども確率を考えるとそちらのほうがありえない、とも思う。けれども可能性はゼロじゃない。
そしてもしポッドが僕の真実だとしたら、その可能性を突き詰める。
砂浜での人生が消失すると、もうこれからの一生をずっとポッドの光景しかみることはできない、のか。嫌だ。
恐怖と恐慌が僕を襲う。
その強いストレスは僕の心臓を止めた、気がする。なんだかふわふわした気持ち。そうだポッドの中で僕はよくこんなふうに心臓を止めていた。
もしポッドが真実の場合は強心剤が打ち込まれてまた息を吹き返すのだろう。
嫌だ。
了
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