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ふと、気がつくと再び昏い。
けれども宇宙とは違う温かい闇。横たわった体に感じる柔らかい木の感触と土の香り。生還してからどのくらい経ったかわからないけれど、長いリハビリの果てに五感の作用は大分回復していた。そしてそれから長い時間を闘病していたことを思い出す。
結局の所、僕の長いポッドでの暮らしは僕の精神と認識に異常を来して、時折錯乱しているということを医師から聞いていた。よくわからないけれども僕の精神が起因するストレスが体に悪影響を及ぼしているらしい。ポッドでの生活に比べればストレスなんてあってないような気もするのだけど、地球の重力は僕の血液や酸素循環にダイレクトに影響を及ぼすから、無菌の宇宙空間より体を痛めつけているらしい。
それで多分僕は死んで、棺桶の底で息を吹き返したのだろう。
そうんなことがあるのかな。でもポッドで救出されるよりはよほど高い確率のような。
そうすると僕はここで改めて死に直すのか。
なんだか変な感慨だ。僕の一生は此処で終わる。
この、一生は。この、救出された一生は。
手のひらにふれる木の感触。この木も昔は行きていた、はずだ。だから僕はこの木と一緒にようやく死ぬことができる、のかな。
どのくらいだろう、1日後? 1週間後?
そんな短い期間で死ねるなら……。
ちか、ちか。
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