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「今、どちらにいらっしゃいますか」
「ここです! 座標軸を送ります! 助けて!」
「聞こえますか?」
「聞こえてます、だから通信を切らないで!」
「駄目ですね、何らかのエラーでしょうか」
ざりざりとしたノイズの隙間から聞こえる音は無情にもプツリと切れた。
4度目の落胆と、回を重ねる度にひどくなる絶望。
ポッドの外では降り積もった闇の上に砂糖菓子のようにチラチラと小さな星々が瞬いていた。それらは連なり重なりとても美しい光景を形作っていたがここからは分厚いガラスに隔てられ、それより前に遥かに遠く触れることはできない。
ここは緊急脱出ポッドだ。
僕は咄嗟にポッドに避難してしまった。そうしたら自動的に射出されて。
同僚からは決して乗ってはいけないと言われた避難ポッドに。
だってとても苦しそうだったから。水死は苦しい。特に宇宙水死は。
モニタの表示は2242年10月24日。
僕がポッドに乗ってから既に121日が経過した。
あぁ。
もう駄目なんだろうか。駄目なような気がする。
この、希望と絶望の狭間のようなじわじわとした嫌な気持ちが精神をずるずると犯していく。気持ち悪い。嘔吐しそう。そんな僕の脳波を検知したのか生命維持装置から何かの薬剤が投与され、気持ちがすっと軽くなった。けれどもまた窓の外を見て、絶望。
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