第7話:小学一年生編(後編)

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第7話:小学一年生編(後編)

 次の日の朝になった。 「しまった……」  オレは寝小便ことオネショをしてしまった。  そういえば昨夜は寝る前に、トイレに行くのを忘れていた。 「ニィニィ、小学生なのに恥ずかしい!」  幼稚園の妹の葵(あおい)にも笑われてしまった。  オレの精神年齢は31才なので、凄く恥ずかしい失敗だ。    そういえば今思い出したが、前世のオレは小学三年までオネショをしていた。毎晩ではないが定期的に、失敗していたのだ。  もしかしたら、これは体質があるのもかもしれない。今世では早めに直すようにしないといけない。 “31歳のオッサン、転生先でオネショを連発する”  かなり恥ずかしい。 ◇  こんな感じで、オレは家では失敗もたまにする。母親にも甘えん坊な部分もあるが。  だが、それ以外では順調にサッカー人生を進めていた。  ちなみに小学生1年生での、平日のスケジュールは ――――◇――――◇――――   朝6時:起床。8時まで自主練習で、その後に登校でスタミナ作り。(通学ルートは成長に合わせてレベルアップする) 午後3時位まで:小学校で授業を受けながら、スポーツビジョンと判断力のトレーニング。あと先生には内緒でこっそりと足でボール体感練習 午後3時半過ぎ:帰宅して間食でエネルギー補充。その後にすぐに練習場に歩いていく。 午後3時50から夕方5時まで:人工芝の練習場で一人の自主練。家で出来ない練習メニューを。 午後5時~7時まで:スクールの練習と試合 夜の7時半前:父親と帰宅。夕飯とお風呂とストレッチと柔軟。あと歯磨きと宿題は瞬殺。 就寝の9時まで:自室でサッカーの練習。難しい技にも挑戦していく。 午後9時:就寝 ――――◇――――◇――――  平日はこんな感じの毎日過ごしていた。  サッカースクールで1年生の練習があるのは。 ・火曜日と木曜日の夕方5時から ・土日は不定期で練習がある。  それ以外の月曜日、水曜日、金曜日の三日間は、前と同じく自主練習となる。  サッカーチームに入ったので、自主練の日もチームの練習場に行くことにした。  そこなら思いっきり練習しても、怪我をしないからだ。 ◇  今日は水曜日。  だから放課後に、いつものようにチームの練習場に来ていた。  練習場の中央では、いつもと違う学年の選手たちが練習している。  彼らは4年生~6年生までジュニア選手コース。小学生年代に一番上手い人たちが、ちょうど練習しているのだ。 (やっぱり、5、6年生や中学生は上手い人が多いな……それに身体が大きいから、迫力も凄い!)  彼の邪魔しないように端で、こっそり自主練していた。足元の練習をしながら、視線を上げるトレーニングも併用する。  年上の人たちの練習を見ているだけで、本当に勉強になる。  前世のオレはどうしてもDVDや動画配信の映像でしか、一流の選手を見られなかった。  だがら、こうして ①脳内の映像 ②自分の動き ③歳上の上手い人の、目の前での動き  この三つに差異が出ていた。  そこで上手い人の動きを見ながら、こうして自分の技の微調整をしていった。  うん。  だんだんと微調整が、上手くいっていくぞ。  父親が迎えにくる夜の7時過ぎまで、もう少し練習をしていこう。 「おい、お前! いつもいるけど、お前、何年生?」  一人で練習をしていると、誰かが声をかけてきた。振り向くと上級生だった。  さっきまで練習をしていた4年生たちである。    2時間もたった一人(ぼっち)で練習しているオレのことを、不審に思ったのであろう。 「ボクは1年生の野呂コウタです。お父さんが迎えに来るまで、練習していました」  一年生らしく礼儀正しく挨拶をする。  何しろ小学生の時期の、年齢の差はかなり大きい。同じチームで逆らう訳にはいかないのだ。 「ふーん。それなら、オレたちとミニゲームして遊ぼうぜ」  どうやら彼らも居残りで練習していくのだ。  4年生だけではメンバーが一人足りないので、一人(ぼっち)なオレを誘ってくれたのだ。 「はい、よろしくお願いいたします!」  オレはすぐに返事をして準備する。  サッカーチームに入会しても、今まではスクールコース。どうしても低学年向きの練習が多い。  だからオレは彼ら選手コースの空気に、触れてみたかったのだ。 「いくぞ、一年!」  4年生のチームメイトがパスをしてきた。  凄く強いパスの威力である。これまでのスクールコースとは、段違いに鋭いパスであった。 「へえー、トラップ、やるじゃん」  どうやらオレは上手くトラップできたらしい。褒めれくれた。  幼稚園のころから日曜日は父親と、公園でパス練習をしていた成果が出たらしい。  父親はサッカー未経験者だが、身体は大きい。蹴る力も強い。  いつも本気でパスをしてもらい、オレは強いボールもトラップできるようになっていた。 「どんどん、いくぞ!」  4年生の仲間はオレのことを認めてくれたらしい。さっきよりも早いテンポでの、パス回しがくる。  これは難しい。やはり実戦でのパスワークは、父親との練習と同じようにいかないのか。  今度からは、もっと厳しくトラップの練習もしていかないと。 「ん? うわっ⁉」  パスに意識がいっていたらオレは、敵チームの4年生に吹き飛ばされた。    これはファールではない。  身体の小さく吹き飛ばされた、オレの方が悪いのだ。 「1年、大丈夫か?」 「はい、大丈夫です! どんどん、いきましょう!」  心配してきた4年生に、笑顔で答える。心からの満面の笑みである  何故ならオレは楽しかった。遊びではない選手コースとのミニゲーム。  得るモノが本当に多いのだ。  そして次に接触しそうな時は、事前に回避をしよう。体格差を利用したフェイントも、オレは会得していた。 「お前、1年のくせに面白いやつだな」 「また、遊んでください!」 「いいぜ!」  ミニゲームが終わり、4年生に人たちに褒められた。  どうやら、またミニゲームの居残り練習に参加できるようである。  こうしてオレはスクールコースが無い日も、4年生たちと居残りミニゲームをする。  父親が迎えに来るまでの短い時間だが、本当に実りのある練習だ。 ◇  1週間のうちでスクールコースが3、4回。  残りの日も、こうして自主練と上級生とのミニゲームをしていく。  たまの休みの日曜日も、自主練を欠かせない。  父親に前よりも早いパスを出してもらい、トラップの練習をする。前以上に全力で蹴ってもらう。 「最近はパパもサッカーが上手くなってきたわね」 「そうかな、ママ? コウタのお蔭で、パパも運動不足の解消だな! はっはっは……」 「ずるい! アオイもニィニィに、パスする!」  こんな感じに家族4人で、公園でサッカーを楽しむ。  オレがサッカースクールに入会したことで、前よりもサッカー中心の生活サイクルとなっていた。  家族のサポートがあるのは、本当に助かる。オレも全力で365日をサッカーに集中することができる。 ◇    こうして毎日がサッカー漬けの日々を送る。  春が過ぎて、夏休みに入る。  夏休みが終わり、秋になる。  秋から冬へ。  充実しすぎて一年間なんて、あっとう間過ぎていく。  そして春の季節が訪れ、オレは小学2年生に上がっていく。  その年、オレは運命の選手との出会いをするのであった。
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