鳩の巣王子

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「じゃあ、あなたは自分の結婚相手を探すために城を飛び出したのですか?」 「それもあるけど……もっと自由になりたいんです。自分で見たいものを見たいし、食べたいものを食べたいんです」  それは王子も同じでした。鳥籠に押し込められた鳥ではなく、自由に飛べる鳩になりたい。窓の外を眺めながらいつも考えていました。 「リコ姫は鳩の巣って見たことありますか?」 「鳩の巣?」  リコ姫はきょとんとした顔をしました。 「見たことないですか? 鳩の巣。どんな形か見てみたくないですか?」  王子がリコ姫に手を差し伸べました。 「見たことのないものを一緒に見ませんか?」  リコ姫が王子の手の上に自分の手を乗せました。王子がゆっくりと腕を引き上げると、足の痛みはすっかり消えていました。 「クモさん! 検索『この近くの鳩の巣』!」  リコ姫がロボットのクモに話しかけると、聞いたことのない甲高い音があたりに響き渡りました。しばらくするとロボットのクモは「ケンサクカンリョウ。コチラデス」と言いました。ロボットのクモを先頭に黒猫のハルが続きます。その後ろを王子とリコ姫は並んで歩いていきました。  そしてその後、王子は念願の鳩の巣を見つけることができましたとさ。  めでたしめでたし。
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