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いつまでも窓の外を眺めている王子に、サンゴ大臣は良家の子女たちの写真を押しつけて言いました。
「とにかく、王子が今やるべきことはお妃探しです。鳩の巣のことなどさっぱり忘れて、やるべきことをやってください」
サンゴ大臣は言いたいことだけ言うと部屋から出ていきました。王子の手の中には数葉の写真だけが残されました。
自分の妃になる人の選択肢が隣国の姫一人から比べれば数倍に増えたのを喜ぶべきなのか、それとも星の数ほどいる女の中のごく一部からしか選ぶのを許されないのを悲しむべきか。王子には生まれたときから自分の意志で決めることは何一つありませんでした。その日着る服ですら、メイド長が決めたものを黙って着るだけです。
王子は写真を見ることもなく、相変わらず窓の外をぼんやりと眺めていると、メイド長のミナコがやってきました。
「ごきげんよう、王子。どうされました? 元気がないですね」
「いや、何も。自由に飛べる鳩が羨ましいと思っていただけさ」
ミナコもつられて窓の外を見ました。
「自由……そうですね。隣国の姫が手に入れた自由を王子が手に入れられないなんて、不公平な話です」
予想外の返答をされて王子は思わずミナコを見ました。ミナコは口角をきれいに上げてにっこりと笑いました。
「一日くらい自由になさったらどうですか? 王子だけが生まれてから死ぬまで籠に閉じ込められた小鳥だなんて、悲しすぎますよ」
「自由といっても、サンゴ大臣は僕を見張っているし、城から出るには衛兵もたくさんいる。どうやるんだい?」
王子が言うとミナコは妖しい笑みを浮かべ、「少々お待ちくださいませ」と言って部屋を出て行きました。
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