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部屋に戻ってきたミナコが手にしていたのは、王子が見たこともない色とりどりの服とアクセサリー、そして化粧道具でした。
「王子、女装しましょう」
「じょ、女装?!」
「ええ。まさか王子が女装するとは誰も思わないでしょうから、女商人に化けてしまえば城から出られますよ。大丈夫、すべて私にお任せください」
そう言うとミナコはあっという間に王子の服を替えました。
「むむ、ミナコ、なんだか足元が寒いのだが」
「スカートなど初めて履きますものね。動きやすいようにスリットが深めに入ったスカートを選びました。ただし、足さばきにはお気をつけくださいませ。周りの殿方を悩殺してしまう恐れがありますから」
ミナコは王子の顔に化粧を施しながら言いました。王子はされるがままになりながら、ミナコの顔を眺めていました。
「ミナコ、君は僕が幼い頃からずっと仕えてくれているが、今まで見たことがないほど嬉しそうな顔をしているのは何故だい?」
「美しい王子をいつか女装させるのが私の夢……いえ、なんでもありません。たった一日でも王子が自由を手に入れられることを、私も喜んでいるのですよ」
長髪の鬘をかぶせられた姿を鏡で見てみると、そこには見たこともない美しい女性が映っていました。
「さ、できました。私が城門までお連れいたします」
王子はミナコとともに部屋を出ました。運よく部屋の前にサンゴ大臣はおりません。歩きなれないヒールの高い靴とスカートに戸惑いながら城の出口を目指していると、廊下の角でばったりとサンゴ大臣に出くわしました。王子は息を呑みました。
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