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「おや? ミナコメイド長、そちらはどなたですか?」
「砂漠の国からやって来た商人です。珍しい香辛料を厨房に届けてくれたのですが城の中で迷ってしまったというので、城門までお連れするところです」
「ほう、砂漠の国。それは遠いところから。ラクダに乗っていらっしゃったのですか?」
王子は黙ったまま頷きました。ミナコは「失礼いたします」と言って素早くサンゴ大臣の横をすり抜けました。王子も後に続きました。
城を出ると手入れの行き届いた庭を抜け、城門までやってきました。先を歩いていたミナコが立ち止まり、くるりと振り返りました。
「私がご案内できるのはここまでです。街は人目が多いですからお気をつけて」
「しかし、僕はどこに行ったらいいのだろうか」
生まれてから今まで自由のなかった王子は、急に城の外に出てもどこに行けばいいのか見当もつきません。
「王子は外に出て何をなさりたいのですか?」
「そうだな……とりあえず、鳩の巣をこの目で見てみたいんだ」
思いもよらない王子の望みを聞いてミナコは眉をひそめましたが、すぐにメイド長らしい落ち着いた表情に戻りました。
「鳩の巣がどこにあるか存じ上げませんが、それなら街はずれにある占い小屋に行ってみたらどうでしょうか。どんな悩みでも解決してくれると評判の占い師がいると聞いております」
「街はずれの占い小屋か。ありがとう」
「道中くれぐれもお気をつけて」
王子はたった一人で城門を出ていきました。従者を連れずに城の外に出るのは初めてです。王子はわずかばかりの不安とたくさんの好奇心を抱えて街はずれの占い小屋を目指しました。
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