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ハルはやがて森に入っていきました。風が吹くと木々がざわめき、あちこちから鳥の鳴き声が聞こえてきます。これはいよいよ鳩の巣を見つけられるのではないかと王子の期待が高まりました。
「タスケテクダサイ!」
鳥とは違う、不思議な声が聞こえてきました。見ると正面から一体のロボットがこちらに向かって歩いてきます。初めて見るロボットに王子は驚きました。黒猫のハルは驚いた様子もなく、静かに足を止めました。
「ヒメサマガサワデアシヲスベラセテウゴケナクナッテシマッタノデス! タスケテクダサイ!」
王子はロボットの言葉を脳内で変換しました。姫様が沢で足を滑らせて動けない。
「それは大変だ。すぐに行こう」
心優しい王子がそう言うと、ロボットはくるりと方向転換して来た道を戻っていきました。ハルと王子はロボットを追います。
しばらく行くと水の流れる音が聞こえてきました。沢のほとりにうずくまる人影が見えました。姫様、と聞いていたのでドレス姿の女性を思い描いていましたが、そこにいたのは短い髪で動きやすそうな服装をした女性でした。
「ヒメサマ! ニンゲンヲツレテマイリマシタ!」
「ありがとうクモさん」
クモさん、というのがどうやらロボットの名前のようです。金属製のロボットは水辺で自由に行動できないのでしょう。沢から少し離れた場所で立ち止まりました。
「大丈夫ですか?」
王子が女性の目線に屈みこむと、足元が一際涼しくなりました。スカートを履いていたのを忘れていた王子は慌てて足を閉じました。
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