パン屋はいつの間にか中心になっていた

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「ずるいなぁ……っ」 「それはセシリアもですよ」 女神様の言葉を聞いて安心した私はそのまま倒れるように眠った。 それから何日眠っていたかは分からない。 だけど、目を醒ますと私はベッドの上にいた。 見慣れた景色は間違いなくガルシア王国のもの。 そしてここは、ノアの部屋。 起き上がって周りを確認しても誰も居ない。 ジェンキンスからどうやって帰ってきたのか、そしてその後のジェンキンスがどうなったのか知りたい。 レイは、元気にしてる? もう辛そうな顔してない? マリーはどうなったの? 気になる事は沢山あるのに、体がだるくて動けない。 ボーっとしていると妖精達が私の頭に触れた。 『セシリア、体調どう?』 「ちょっと、しんどい」 『そりゃそうだよ。あれだけ無茶したんだから』 「……神様達は?」 『もちろん持ち場に戻ったよ。あれから何日経ったと思ってるの?』 「え……」 『もう2か月だよ?』 そう言われて意識がはっきり覚醒する。 自分の腕を確認すれば点滴の針が刺さっていた。 そんなに寝ていたなんて……。 せいぜい2・3日だとばかり……っ。 頭を抱えていると妖精達が笑った。 『あのね、レイから手紙が来てるんだよ』 「え?レイ?なんで?」 だってレイの記憶は消したはず。 私の事を覚えているわけがない。 だから手紙が届くのはおかしい話だ。 首を傾げていると妖精達が手紙を渡した。 『女神様の記憶操作だよ』 「!!」 『セシリアがレイを友達だって言ってたから、レイの記憶からセシリアの記憶を消さずに幸せな記憶だけを残したの』 手紙を開いて内容を確認する。 どうやらレイは今、幸せに国で過ごせているらしい。 でも私の作ったパンが無性に食べたくなると。 忘れられていない事が、こんなにも嬉しいなんて……。 『セシリアは両国を救った英雄なんだよ』 『その事は誰にも知られてないけど……』 『セシリアは本当に凄い、誰にも出来なかった事をした凄い守護者なんだから、胸を張ってね』 小さな友人たちは私の側で嬉しそうに笑った。 守護者か……。 この国にマリーという守護者はもう存在していない。 この国を守れるのは私だけ。 ……今まで黙っていた事を謝らないと。 これからどうなるのか分からなくて不安になる。 ぎゅっとシーツを握り締めると部屋に誰かが入ってきた。 ・
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