パン屋はいつの間にか中心になっていた

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「セシリア……?」 入ってきたのはノアだった。 起きている私に気づいて驚いている。 『ノア様ー、セシリア起きたよー』 「うん、ありがとう」 ノアが妖精達と話してる? どうして? だって、守護者しか妖精って見えないんじゃ……。 そう思って固まっていると妖精達がクスクス笑った。 『実はヘンリーが僕らの事を守護者以外でも見れる様な機械を作ったんだ』 「え?」 『お城の中で稼働させて、街の人にもみえるようにしてるよ』 『だから、私達、街の人ともお話できるようになったの』 なんだ、そのハイテクな機械は!? ヘンリーって実は凄い研究者なのでは……? 「セシリアはいつも彼らと話してたんだね」 「一人でも寂しくなかったよ。もう知ってると思うけど、この子達うるさいから」 『酷い!セシリア!』 『楽しいって言ってもらいたいんだけど!』 「ほら、うるさい」 そう言って顔をしかめると妖精達が殴ってきた。 その様子を見てノアが笑った。 そしてベッドの淵に腰を掛けると私の頬に手を伸ばした。 「体調、どう?」 「まだ少しだるさがある感じ。でも大丈夫」 「またそれ」 「え?」 「セシリアはすぐに『大丈夫』って言う。その言葉を信じたけど、ジェンキンスであんなことになった。だからもう、セシリアの『大丈夫』は信じないって決めたから」 どうやら私はノアの信頼を失っているようだ。 本当に大丈夫なんだけど……。 「この国に帰ってきたら、セシリアがこの国の守護者って事になってた。妖精達から女神様のおかげだって教えてもらった。俺は守護者の婚約者って事になってて、管理者達のまとめ役になってたんだ。おかげで仕事増えた」 「なんかごめん……」 「いいよ。だって、これでもうセシリアは俺のって事だから」 「何を……っ」 「セシリアに婚約破棄されたら、俺は国の恥さらしだから。俺の事守ってね」 なんて可愛い笑顔で言ってくるんだろうか、この王子様。 赤くなって固まっていると妖精達が笑っていた。 ノアは私の頭を撫でてから私を抱き締めた。 「本当に、セシルは凄いね」 「ノア……」 「国一つ、簡単に変えてしまったんだから。もう辛い思いをする人が居ないって、こんなにも幸せなことなんだね」 それはジェンキンスにいるレイ達が幸せだということ。 この2か月、何がどうなったのか私には分からない。 体調が戻ったら一度顔を見せに行こうかな。 そう思いながら私はノアに抱き着いた。 「セシル?」 「ノア、ごめんね」 「どうしたの?」 「ずっと黙ってて。妖精が見えてる事も、守護者の力がある事も」 ・
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