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体調も回復して、久しぶりにパンを焼いた。
やっぱり、パンが焼ける匂いって好きだな。
お客さんも待ってくれていたのか、沢山人が来てくれた。
「セシリアちゃん、もう大丈夫なのかい?」
「おばあさん!うん、もう大丈夫だよ。ありがとう」
「久しぶりにセシリアちゃんのパンが食べられるなんて、長生きはするもんだね」
嬉しそうにそう言ってあんぱんを手に取るおばあさん。
妖精達も一生懸命接客していた。
「セシリア」
声をかけられて顔を向けると、ジャックが笑顔で手を振っていた。
「ジャック、どうしたの?」
「ジェンキンスの様子見に行ってお腹空いたから何か頂戴」
「いいよ。何が食べたいの?」
「クリームパン」
「はいはい」
私はクリームパンを手に取ってジャックに手渡した。
「マリーは元気だった?」
「うん。レイと一緒に頑張ってるよ。レイは動きがいいから、いい騎士になれると思う」
「まあ、元々殺し屋みたいなものだったからね」
「今度セシリアも行くんでしょ?」
「そろそろ私のパンを恋しく思ってると思うから」
「自意識過剰。でもその通りだったよ。特にマリー様なんて元気なかったから」
出来るだけ早く持って行ってあげよう。
そんなに私のパンを好きでいてくれるなんて嬉しいな。
「あ、そうだ。ヘンリーがまた変な研究に没頭してるから何か食べさせてあげて。妖精が見える機械なんて作ったから、世界的に結構有名人になっちゃってさ。毎日いろんな人が来てるから休まらないと思う」
「これだけ凄い機械作ったらそうなるよ。教えてくれてありがとう。あとで行ってみる」
ジャックは笑顔でひらひらと手を振ると去って行った。
最近ジャック、返り血浴びてないな。
それだけ平和になったということだろう。
ジャックが誰も殺さなくていい世界。
そんな幸せな暮らしが、世界が、手に入っているって事かな。
「皆ごめん、ちょっとヘンリーの所に行ってくる」
『いってらっしゃーい』
『僕らに任せてよ!あ!それ、カルツォーネって言うんだよ!とっても美味しいから買ってみて!』
なんて頼もしい仲間達。
私はクスッと笑った。
そしてヘンリーにパンを持って行く。
研究室の部屋をノックしても返事が無い。
これはいつものこと。
中に入ると、ミレットさんとヘンリーが二人で居た。
ただ、二人の体勢が私を固まらせたけど。
「……何してんの?」
「セシリア!?」
完全にミレットさんを押し倒しているヘンリー。
軽蔑の眼差しをヘンリーに向けるとヘンリーが勢いよく首を横に振った。
「ご、誤解だから!!薬品取ろうとして体勢崩しただけだから!!」
「いくらミレットさんが美人だからって、男性恐怖症だった女の人押し倒すってどうかしてるんじゃない?」
「ちょっと待って!誤解だって!!」
私はため息をついてヘンリーをミレットさんから引き離した。
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