手紙

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エリアスたちの死体は、まるでそこには何もないかのように、何度も何度もむごく踏みつけられた。その弾みで手紙はエリアスの鎧からボロンと(こぼ)れ落ちて、布のブラウスに身をまとった貧相な男のブーツにひょいと乗っかった。 「おい、なんだこれ?」 「ただの紙切れだろ。値打ちなんざないさ」 —男は紙を拾い上げた。 「しかし、見てみろよ。なんか書いてあるぞ」 「あ?こりゃ一体何語なんだ?まるで読めやしねぇな」 「この綴りはドイツ語だろうな…。おーい、ドイツ語が読めるやつはいないのか!」 すると、銃を肩にかけた身なりのいい青年が「少しなら分かりますよ」とやってきたので、男は「読み上げろ」と言って青年に紙切れを渡した。 青年は上擦った声調でフランス語に訳しながら読み上げていたのだが、ある瞬間息を飲むと、以降は声に出さなくなった。顔は、見る見るうちに青ざめていく。宮殿を包囲していた際、「傭兵どもは血の通っていないただの鉄塊だ」と吹き込まれていた青年は、それを盲信してエリアスたちをたやすく撃ち殺してしまったのである。しかし、手紙によってその嘘は暴かれ、青年は凄まじい悔恨の念に駆られた。 「これを、スイスに届けてください」 そう言うと、青年はすっと(かが)んでエリアスの兜に手をかけ、悄然(しょうぜん)とした調子で「彼らにも血は通っていたんですよ」と呟いた。 エリアスの兜を開けた。その(まぶた)は静かに閉ざされて、唇はまだ淡く赤みがかっていた。
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