選ばれたあなたージオン・カルサベカトルの場合ー

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選ばれたあなたージオン・カルサベカトルの場合ー

『お前は選ばれた人間だ』 それは、幼い頃からずっと父を始め、周りの大人から言われてきた言葉だった。 俺が長男として生まれたカルサベカトルの家は、階級制度が撤廃された今尚崇められる皇族・グリスツェンの家を支え、管理を一身に引き受ける家だった。将来は俺と同い年でグリスツェンの家を継ぐことになるアレクサンダー・グリスツェンの側で生きることが決まっていた。 そんな未来のことを知るよりも先に、俺は幼馴染みでもあるアレクことアレクサンダーとは仲良くしていた。妹のシェーン・カルサベカトルも交えてよく一緒に遊んだものだった。アレクは親しみやすく、友人として申し分なかった。シェーンはそんなアレクに、この頃から好意を寄せ始めたようだった。 成長し、将来のことを何となく知るようになっても、特に大きな不満があった訳ではない。皇族に次ぐ家柄の子息として俺は周りから十分に崇められた。 アレクは皇族という家柄だけでなく、眉目秀麗、成績優秀、にも関わらず性格も親しみやすいと非の打ち所のない人間だったため、俺より格上の扱いを受けていても、それは当然と受け入れるしかなかった。 ただ、少しだけ話が違うと思った。 『選ばれた人間』であるはずの俺の上に、なぜ他の人間がいるのか。それはどうしようもないことだと分かってはいても、俺より恵まれ、人気もあるように思えるアレクが、俺は少しだけ面白くなかった。
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