追憶と傷跡

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◆3 水泳部は、いつも屋上で集まっている。 そこは普段閉鎖されているが、水泳部員のみ鍵を持って入ることが出来る。 「あのー」 ドアを二度叩いたが反応がない。 「ラスボスから頼まれたんすけどー」 「……」 中に人がいる気配はあるのだが、スルーされているようだ。 「零夜くん、いたら返事……」 「幸他くん?」 「おー、いた」 「黙ってろ! 零夜……」 なんだろう。 中に二人もいて、無反応だったとか……。 「ラスボスが連れてこいって」 「!」 足音が近づいてきて、ドンッとドアを揺さぶる。 「零夜、そのままじゃ無理だろ」 開きかけた扉が、パタンッと閉まる。 「来てくんないと困るなぁ」 ちょっと、どうでもよくなりかけている俺は、ぼやくように、そう呟いた。 「……夜十(やと)、行ってくる」 完全にドアが開くと、そこにいたのは紫のチャイナ姿の女。 ……の恰好をした零夜。 (髪長げぇな) 眼鏡はしてなかった。 とても冷たい目をしていた。 (人、殺しそう……) でも、女の子は、こういう方が好きなのかもと思う。 (眼鏡、勿体ねぇ) 「じゃ、行くか」 「はい……」 (チャイナのままでいいんかね?) そう質問したいが、後ろをついてくる零夜に、なんて言っていいかわからない。 「あのさ」 「はい」 「制服はどこ?」 「ありません」 じゃあ、零夜の正装はチャイナか! そうかそうか! 「化粧してんの?」 「……いえ」 「じゃあ、もともとか」 「何がですか?」 俺が立ち止まると、後ろをついてきていた零夜にドンッと衝突する。 「顔だよ顔、眼鏡外せばいいのに。女寄ってくんだろ。綺麗でさ」 「! 僕は別に、女の子には興味……」 「あ?」 「……いえ、なんでも」 女の子に興味がなかったら、何に興味があるんだ? 振り返って、じっと見上げる。 「あー、そうかわかったぞ!」 「? 何がです?」 きっと、そうだ。 そうに違いない。 「零夜くん、女子より綺麗だもんな! だからチャイナなんだろ?」 「? え、どういう……」 「だから、自分以下の女なんて、はっ、な感じなんだろ」 「……そんなことは」 じゃあ、なんでとチャイナ服を指差す。 「ま、いいや。とりま、制服ねぇなら、そのままで」 「……」
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