追憶と傷跡

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◆5 結局、ウィッグは取ってもらって、制服の代わりに、俺のジャージを着せた。 流石にチャイナ姿の男子と歩きたくなかったから。 「幸他くん、すみません」 「いーよ! 俺がそうしたかっただけ」 「僕、ほんとは」 「ん?」 帰り道が同じ方向らしく、一緒に帰っていたのだが、急に零夜が立ち止まるもんだから、俺もつられてピタッと止まる。 「……幸他くんの方が綺麗だと思う」 それは、きっと褒め言葉として言ったのだろう。 「あー、それあんま嬉しくねぇ」 「え?」 「零夜くんは美形だけど男ってわかる美形で、俺たまに間違われるんだよ。幸薄女子ってさ」 「誰がそんなこと!」 ま、いーけど! 「別にいいけどね」 「……ごめんなさい」 「なんで、零夜くんが謝るの? 零夜くんの褒め言葉でしょ?」 「そうですけど……」 じゃあ、いいじゃん! ポムポムと胸を叩くと、零夜くんは申し訳なさげに笑った。
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