目立ちたがり屋でジャグリング上手なあいつへ

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 その後収録は再開され、小学生時代の思い出トークやそれぞれの今について語っていたが、どこか気まずさの残るものだった。特に、芸人にさっきまでのキレと元気がない。  彼の自業自得だと言ってしまえばそれまでだが、時間が経って冷静になった今、「本当にそうか?」と問いかけるもう一人の自分がいた。こんな空気になってしまったのは本当に、あの芸人のせいなのか?  いや、違う。やり方は褒められたものではなかったが、彼は彼なりに「笑いを取る」という彼の仕事を全うしようとしていただけだ。じゃあ、誰が悪いのか?  彼が失言ともとれるコメントを連発してしまったのは、ろくに気の利いたコメントもせず、普段着ないスーツなんかで着飾り……「皆を笑顔にする」という自分の仕事も忘れて個人的な復讐にばかり囚われていた自分のせいではないのか? 挙句、傑が働かない分一生懸命に番組を盛り上げようとしていた彼を叱責し、勢いという彼の持ち味を奪った。  そう、悪いのは大人げなく声を荒げた傑だった。取り返しのつかないことをしてしまった……しかし、気付いたところで時間は巻き戻らない。  番組は進行してゆく。このままではいまいち盛り上がらないまま番組が終わってしまう。どうしたらいい? 一体どうしたら……。
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