四 べにばなさかうころ

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 氷の重なる澄んだ音とともにグラスが陽向の前に置かれた。アイスコーヒーだ。 「このさ、コーヒーと牛乳の混ざり合うマーブルのところ、可愛いよね」  陽向のアイスコーヒーは牛乳入りだ。混ぜずに色の境目を楽しみながら飲むのが陽向流だった。 「幸太、白いマカロン何味?」  思案顔で幸太は一口含んだ。 「……バニラ、かな?」 「いいなー美味しそう! 私のはね……フランボワーズだ!」  半分齧って幸太の皿に置いた。 「フランボワーズ美味しいよ! 半分こしようよ」  眉を上げて笑うと、一口齧っただけのバニラのマカロンを陽向の皿に乗せた。 「もっと食べてからでいいよ」 「いいよ。美味しいから陽向が食べな」 「夕ご飯入らなくなっちゃうよ」  壁の時計を見た。普通の家庭ならご飯を食べ終え団欒している時間だ。  普段だったら、夕ご飯の前のお菓子をたくさん食べると怒られる。こんなに幸太が優しいのは、明日の事を不安に思う陽向を慮ってに違いなかった。
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