四 べにばなさかうころ

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「大丈夫だよ、食べられるよ。なんといっても、今夜は海鮮丼だから。これ食べたら作ろうか。宿題終わってからのほうがいいか?」 「海鮮丼! やったー! 宿題の前に食べたい」  貰ったバニラのマカロンを一口食べた。バニラの香りが鼻を抜ける。  今夜は海鮮丼だ。小さな頃は、魚があまり好きではなかった。でも、ここに越してきて、新鮮な魚を食べるようになり、大好きになった。  越してきてすぐ、寿司屋に行った。刺身のあまりの美味しさに、子供ながらにたくさん食べて、幸太を驚かせた。  不意に思い出して、幸せな気持ちになった。 「陽向、思うんだけど、恐らく、いや絶対だな。朝陽さんも同じように不安だと思うよ」  にわかに幸太が切り出した。 「一歳から触れていない娘に会うんだ。肝の据わった人だけど、それでも不安だと思うし緊張してると思うよ」  アイスコーヒーを飲むためにグラスを傾けると、氷の合わさる音がした。氷の音は綺麗だ。澄んだ音は人の気持ちまでも透過するようだった。 「幸太も行こう」  迷っていた事を思い切って口にした。  顔が強張るのが分かる。喉の奥もカサカサでくっ付きそうだった。  朝陽ともう一度会いたいと思った時から、ずっと考えていた。幸太と一緒に、三人で会いたいとずっと思っていた。
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