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「霰が降ってきちゃったね」
店員の女が外を見て顔を顰めていた。手には丁寧にビニールを掛けた手提げの紙袋を持っている。
「傘は持ってきた?」
店員から紙袋を受け取ると、陽向は鞄の中の折り畳み傘を見せた。
「雷が近いので、どこかで雨宿りをしてから帰ります」
店員にお辞儀すると、店を出た。真っ黒の雷雲が、海のほうから山に向かってずんずんとやってきているのが分かった。
今すぐ帰るのは危険だ。本屋で時間を潰そうと折り畳み傘を広げたときだった。肩を叩かれ振り返ると、さっきの店員が立っていた。
「良かったら、これ使って。あそこのカフェの割引券」
手の中の長方形の紙は斜向かいにある、店内の天井から吊るされた観葉植物がおしゃれなカフェのドリンク割引券だった。
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