灰かぶりの少女と嘘つき王子

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「やあ、今年も会いにきたよ」  煌びやかな世界を描いた本から抜け出たような輝く金髪と青い瞳の青年は、今年も私に会いにきた。生前は王子だったそうだが、死んでからは身分などあってないようなものだ。  彼は生前の行いが悪く地獄行きだったが、悪魔を騙して死後地獄に落ちないよう契約を結んでいたがために、天国にも地獄にも行けずジャック・オ・ランタンに閉じ込められている。普段は封じられて出れずにいるが、他の霊たちと同様にハロウィンの時だけ外に出ることが許されるのだ。  彼がここにきたのは、ジャック・オ・ランタンが私の家の前に転がっているからだ。だから、はるばる私に会いにきた訳ではないし、彼が覚えている内容においては特別な関係ではない。  どちらにせよ、単なる隣人というだけで、王子だろうがその辺の村人だろうが、私にとっては特に意味のないものだ。  視線をそちらに向けることなく、私は手元の薬草をすり鉢ですり潰す。今作っているのは痛み止めを兼ねた万能薬だ。 「相変わらずキミは老けないな。キミに会うのはもう何百年目かも忘れたけど、ずっと少女のままなわけ?」  老けないのはあんたもだろう、と胸の内で呟く。王子も若くして死んだので、二十歳そこそこの姿をしている。
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