405人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
例のごとく2人が来た。困るのは出入り口近くに席を取ることだ。威圧的な雰囲気を纏っているからちょっと尻込みするお客さんもいたりする。しかし、やはり生ビールを飲むだけ。席取りは自由だからどうにもならい。
変化があったのは4日目。2人が座っているところに後から来た柄の悪そうな男が合流した。首元に金のチェーン。手首にもチェーンと高級腕時計。目立つ金の2つの指輪。いかにも筋者、ヤクザだ。
夕方からの客足が伸び悩む。直接的な営業妨害ではないが、営業妨害に等しい。
5日目金曜日。純ちゃんが入り口の席全部に『予約席』と いう札を置いた。
「純ちゃん!」
「見知ったお客さんに座ってもらいましょう! 金曜はお客さん、多いですから」
狙いは当たり、きた3人は舌打ちしながら奥の席へ陣取った。これは純ちゃんの作戦勝ちだ。
「やったね! 蓮、純ちゃんにミニボーナス出そうよ!」
「あいよ! 純ちゃん、偉いぞ!」
他のスタッフも称賛する。
「良く思いついたな」
源も感謝している。純ちゃんは一日照れていた。
「なに、あれ、あの連中の対策?」
心配して来た花はR&Dから6人引き連れてきた。客足を心配してのことだ。
「OK、出口付近、俺たちで固めるよ」
「助かるよ。大人しいのに変わりはないからなにも出来ないんだ」
「みんなもなるべく来るようにするって言ってるからさ」
「悪いな。割り引くよ」
「いいって。水臭いこと言わないでよ。哲平さんも承知してるから。来週はここで何度かミーティングするからホントに予約お願い」
持つべきは者は友だ。有難くて涙が出る。
次の週にはさらに変化が起きた。3人が4人になる。と同時に、その4人を取り巻くように8人のグループが来た。身なりもちゃんとして人当たりがいい。
「ここ、いい店ですね。ちょこちょこ来ます。よろしく」
その中の年長の男性が蓮に挨拶した。その顔を蓮は覚えている。ジェイが車で拉致されそうになった時に蓮がドアに掴まって引きずられた事件があった。その時に見た柴山隊の1人だ。
「全員、生ビール。料理はマスターが見繕ってジャンジャン出してください」
これも有難く思う。一般のお客さんから完全にあの4人がブロックされた形だ。
こうして、静かな攻防戦が続いてく。
最初のコメントを投稿しよう!