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5人は柴山の事務所の地下に連れて行かれた。もちろん堂元がお待ちかねだ。5人の顔つきを見て、普通に尋ねたのでは情報は手に入らないと分かった。
「堂元流の質問をするか」
それを聞いて、部下たちがペンチだのハンマーだのが載っているワゴンを押してくる。今から始まるのは拷問だ。
「やっぱりなごみ亭を潰す気だったか」
「はい」
「新庄か?」
「ええ、親父っさんの言った通りでした。連中は傭兵です。まだまだ人が来るでしょう」
「店に入る前に柄の悪いのは押さえちまえ。中には常に誰か2人を潜らせておけ。大将にはバレねぇようにな」
「ある程度は話しておいた方が」
「俺ぁ大将に顔向けできねぇんだ。こんなことなら最初っから出入りしなきゃ良かった……俺ぁ甘ったれてたんだよ、ちったぁ堅気の世界に浸ってられるような。ヤクザの組長って肩書を忘れられるような気がしてな。そのツケが回ってきた。なんとしてでもなごみ亭は死守する。いいか、腹を据えてやるぞ」
「分かりました。店に手を出すとどうなるか。それを分からせてやります」
柴山は5人の手当をすることもなく、新庄の玄関の前にトラックで運ばせた。荷台からごろごろと5人の体を落とす。1人は腕を肘から切り落とされて。1人は足首から先を完全に潰されて。どれも1人としてまともな生活を送れないような体にされている。
「しょうがねぇなー。他の手を打つか」
新庄は舌なめずりしていた。嫌がらせならどんな手でも使う気だ。
だが悉く失敗する。純ちゃんの姉、沙耶、眞喜ちゃんの娘。近づく者は消えていく。ジェイは蓮が1人で外に出さない。だから狙えない。
そして捕まった者は皆トラックで新庄へ届けられた。
「なんで殺さないんです?」
「面倒だからよ」
堂元の格下が上の者に聞くとニヤニヤ笑ってそう答えた。
「死体にするのと送り付けんのと。始末する意味じゃあまり変わんねぇが、死体は掘って埋めなきゃなんねぇ。送られたもんを新庄がどうするかは知らねぇが、相手は新庄だ。使いもんになんなくなった兵隊はどうなるかな」
新庄のことだ、失敗した者に待つ制裁は厳しいものになるだろう。
新庄は他の手に出ることを考え始めた。素人相手じゃ後々に尾を引く。
「飽きた。なごみ亭はやめだ。他の手を考える」
こうして親父っさん以下の働きによって、なごみ亭は死守された。しかしその実態を知っているのはなごみ亭では光ちゃんだけである。
そして抗争が激化するのは翌年。三途川本家への殴り込みは池沢の亡き父の七回忌の日となる。
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