お兄ちゃんとの再会

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そのお兄ちゃん欲がやっと落ち着いてきたのは就職先が決まった頃だ。 水道の配管工事や修理等を事業内容とする小企業、パイプーン会社で事務員として働きはじめて三年。 今じゃお兄ちゃんはいいから彼氏が欲しい。 社会人になると出会いがない。 従業員38名の会社は9割が男性だが既婚者が大半で、独身者はなんというか、個人的に恋愛対象になれない。 会社は会社。 公私混同したくなかったりする。 とはいえ、私にも気になる人はいる。 それは通勤で毎朝利用する都バスに同じく乗車する井ノ上さん。 菓子業界のトップの一つに君臨する株式会社デリシャス製菓で勤務するサラリーマンだ。 苗字と勤務先以外の個人情報は不明だが、一年も同じバス停で同じバスを待っていれば接触する機会も度々あり、今ではたまに挨拶したり、バスの中で横に並べば日常会話程度ならするようになった人だ。 長身で整った顔立ち。 お年寄りが乗車すれば一番に立ち上がり席を譲る気遣い。 マナーの悪い高校生に注意できる勇気。 そしていつの間にかその高校生達に慕われている面倒見の良さ。 …気にならない方が無理だ。 だけど、この恋はほとんど諦めている。 乗車するバス停が同じなのでご近所さんなのだと思うけど、ひと月前のある休日、立ち寄った家の近所のコンビニで可愛い女性と仲睦まじい様子で買い物をしてる姿を見てしまったのだ。 あれは彼女だろう。美男美女で眩しかった。すっぴんでコートの下はパジャマというズボラな自分を見られたくなくてあの日は走って家に帰ったものだ。
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