3.もう一番目じゃいられない

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「あっ、ぁあ…ん……っ」  ブル……ッ、と身震いする。  マットレスと夜鳥の体の間で押しつぶされそうなほどの律動に痙攣しながらも、これほど求められる悦びに、朝五は酷く昂奮した。  過去に嫉妬しても仕方がないとわかっていても衝動を抑えられずに遅れを取り戻したがる夜鳥が、愛おしい。  好きなだけ貪ってくれればいいと、痺れるばかりで力が入らない腕を持ち上げ、夜鳥の首に巻き付ける。 「っふ……朝五……」  夜鳥は切なげに眉根を寄せ、朝五の唇に荒々しく噛みついた。  舌がマヒして言葉では伝えられなくとも、抱き寄せれば伝わる。  ちゅ、ちゅ、と口づけながら、互いの汗と淫液を擦りつけ合い、熱く、甘く、艶めかしく、しっとりと絡み合った。  荒い呼吸とベッドの軋みが心地よい。  結合部でかき混ぜられた潤滑油が泡立ち、小さく締まった尻と猛々しい陰部の間で幾重にもねばつく。  不快じゃない。むしろ興奮する。  初めて抱き合った夜よりも情熱的で、官能に満ちた結合だ。朝五の足が滑り、夜鳥の腰を捕らえる。  胸が重なるほど密着しこすり合うと、完全にとろけきった肉穴に出入りする猛りが注ぎ込もうと膨れ上がった。  そして刹那奥深く先端を押しつけられると──ドクッ、ドクッ、と欲望が迸り、薄いゴムを経て、朝五の中で強く脈動する。 「ん……ふっ……」 「あぁ、っひ……夜、鳥……っ」  掠れた息を吐く夜鳥の震えを抱き、朝五は無意識に内部を締めつけ、欲しがった。  種付けを阻むゴムがなかったとしても、男の朝五では孕まない。  腹の内に家族ができるわけじゃないのなら非生産的な行為に思えるが、それ以上に、恋い慕う相手と同じ気持ちで交わることに繋がりを感じる。 「あ……ぅわ、っ……く、っう……っ」  トクン、トクン、と余韻に浸るモノを収縮する襞で味わっていると、同じく張り詰めていた朝五の屹立から漏れるように精が滴り落ちた。  自分で中を蠕動させていただけで達してしまったようで、腹筋の凹凸を白く彩る白濁液がはしたなく感じる。  恋人が自分の体で達した感覚で、まさかこんなに気持ちよくイってしまうとは。  これまでの恋人たちとはもっと遊びじみた不健康なドエロい行為に偏りがちだったので、こうしてノーマルな行為を余韻まで味わうことなどあまりなかったせいだろう。 (う、うおぉぉ……性癖新発見……! んで俺、普通のやつのが照れる、かも、しんねぇ……!) 「ジーザスエロス……!」 「朝五……」 「んっ? どした?」  朝五がひっそり己の性癖を恥じていると、夜鳥がふと、甘えるように抱きしめる腕の力を強くした。  首を傾げるが、朝五の髪にスリスリと頬を擦りつける。  問題なくセックスができた夜鳥も、なにやら恥じているらしい。 「もう、あんまりやらしいことしないで……やきもち妬いたりがっついたり……朝五が好きすぎて格好悪い俺が、どんどんバレちゃう……」  朝五はきょとんと瞬きをする。  ずいぶん可愛らしいことを言うものだ。  朝五は確かに、夜鳥が朝五を知るほど夜鳥を知らない。  しかし、愛する人と最後まで添い遂げた人たちは、初めからお互いを知り尽くしていたわけじゃないだろう。  少しずつ理解し合って、お互いがお互いの一番であろうとする。  独りよがりになってしまった関係の末路をよく知る朝五は、そのプロセスの価値をわかっている。  この人が好きだと感じたなら、その感情を、大切に育てていくのだ。 「夜鳥の運命は俺なんだろ? んじゃ、格好いいも格好悪いも全部ひっくるめて愛せるように二人で合わせて行かなきゃ、運命ってのは作れねーんだよ」 「二人で?」 「そ。あれって、手作りなんだから」  朝五はにへらと笑い、一つの恋だけを追いかけてきた不器用な夜鳥の頬に、同じ心で寄り添った。
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